【輸入盤】交響曲第0番 アイヴァー・ボルトン&ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
作品の真価を引き出した情報量の多い演奏&録音
ブルックナー:交響曲(第0番)ニ短調 WAB.100
アイヴァー・ボルトン(指揮)ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
ベルリン・クラシックス制作モーツァルテウム管弦楽団シリーズの1枚。装丁は美麗なディジパック仕様で、掲載テキストは英語とドイツ語。ウィーン生まれで36年間ザルツブルクで音楽ライターやドラマトゥルクとして活動するゴットフリート・カスパレクが有益な情報を書いています。
ボルトン&モーツァルテウム管のブルックナー
アイヴァー・ボルトン指揮モーツァルテウム管弦楽団のコンビは2004年から2015年にかけてザルツブルク祝祭大劇場でブルックナーの交響曲全集を録音していましたが、ホルガー・ウアバッハが担当した対向配置の第1番、第2番(2013、2015年)と、イエジー・ポスピーハルが担当した通常配置のほかの曲(2004〜2010年)では音の傾向が少し違っていました。
編集・ミックスまで自身のプロダクションで実施
今回は第1番、第2番と同じくホルガー・ウアバッハによる録音ですが、編集・ミックスまで自身のプロダクションでおこなっているため、間接音や残響、低音の保存具合が良く、ナチュラルでレンジも伸びているため、ボルトンとモーツァルテウム管弦楽団本来のサウンドを快適に楽しむことができます。
ボルトンは2020年に、「オーストリア共和国の特別な利益における並外れた功績」に対して、オーストリア国籍が与えられていますが、それも納得の見事なサウンドです。
対向配置でわかりやすい作品構造
このニ短調交響曲は、対位法的な書法が重要な役割を果たす作品のため、第2ヴァイオリンが目立つ場面も多く、ヴァイオリンを両翼に展開する対向配置は非常に効果的です。
また、対向配置を採用する演奏は、各楽器の音が聴き取りやすい傾向があるので、ブルックナーが指定した楽器編成(フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦5部)がもたらす音響効果を、ブルックナー本来の楽器間の音量バランスで確認できるのは理にかなっています。
さらに、ボルトンはフレーズの形をきちんと維持させるため立体感も申し分なく、音楽の細部までよくわかることから作品構造が理解しやすくなっているのも大きなポイントです。
前作第1番よりブルックナー的な書法
第0番という通称のおかげで習作と思われがちなこのニ短調交響曲ですが、実際に聴いてみると、オルガン的な美しいコラールや長い休止に加え、フガート、ユニゾン、オスティナート、野趣あふれるリズム、強力な金管など、おなじみのブルックナー的書法が大量に投入されているので、第1番から第9番の場合と同様、曲に親しんで慣れてさえしまえば、魅力あるブルックナー作品として十分に楽しむことができるものと思われます。
ブルックナーの他作品との共通素材
3年前に完成した交響曲第1番では宗教作品は引用しなかったブルックナーですが、ここではミサ曲からの引用をおこなって美しい効果を上げています。また、前年から上向いてきた仕事運・生活運のもたらしたインスピレーションのおかげか、のちに交響曲第2番、第3番、第9番にも転用されるような良質な楽想が数多く登場するのもこの作品の特徴です。
作曲当時のブルックナー
参考までに、作曲年と前年の時系列情報などを記しておきます。
【1868年】
◆ 1月、ミサ曲第1番がリンツ旧大聖堂で初演。成功。
◆ 5月、ハ短調交響曲(第1番/1865〜1866年作曲)がリンツで自身の指揮で寄せ集めオケで初演。批評は好意的だったもののブルックナーは満足できず、23年後の大改訂再演まで封印。
◆ 9月、ミサ曲第3番完成。リンツからウィーンに転居。
◆ 10月、ウィーン楽友協会音楽院(現ウィーン国立音楽大学)の教授に就任(和声と対位法とオルガンを担当して年俸800グルデン。翌年ブルックナーが雇う家政婦は月7グルデン)。ウィーン宮廷の礼拝堂で、オルガニスト補佐、資料室副主任、合唱団第2歌唱指導者も無給で兼務。
◆ 12月、オーストリア文化教育庁から交響曲作曲奨励金として500グルデン支給。
【1869年】
◆ 1月、ニ短調交響曲(第0番)作曲開始。交響曲第2番と
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