【POD】よりよく生きるための仕事と会社:ISOの原則
理念が人と会社、社会を強くする
日本の成長のカギは「調和」にあり
より良い職場、より良い成果を目指して転職を繰り返し、
起業に至った著者が経験した衝撃の出会い。
それが品質管理の世界基準であるISOだった。
グローバル・スタンダードの波と日本の文化の間で生じる摩擦を克服し、
よりよい社会を作るための「仕事と生き方論」だ。
自分を貫くための「仕事」とは
シンプルなタイトルからは想像できないほど、職場で「勝負に出ている」のが本書の著者だ。自分なりの理想、あるべき会社の姿を求めて、職場を移るたびに筋を通そうとする。例えば初めて入った会社を去り、転職先で社長が掲げていた理念にひかれてその理念を全うしようとしたところ、「掲げていた理念はあくまでもお題目に過ぎない」とわかるや、すぐに社を去っている。
つまり「よりよく生きるための仕事と会社」というタイトルは自らの職業人生を全うするため、納得のいく仕事と職場を求めて戦い続ける著者の姿勢を表したものなのだ。
本書は高度経済成長時代から始まる。しかし誰もが前を向き、上を向いて歩いていたわけではないことが本書からわかる。三社目になる会社で工場長として配置された際のあいさつで「日本一の工場にしましょう」と述べて反発を受けるくだりなどは、当時の「現場」の雰囲気をいやおうなく伝えているといえるだろう。
副題の〈ISOの原則〉にある、ISOとは「国際標準化機構」のこと。いま最もポピュラーなのはISO9000シリーズで、品質を保つために必要な、品質を作り出す人間のマネジメントに関する原則を定めている。
著者は独立してコンサルタント会社を経営していた1995年、中学時代の友人からISOを知り、衝撃を受けたという。自分がこれまで経てきた職場で実現したかった組織のありかたが、ISOの原則と〈ぴったり一致していた〉というのだ。つまり「日本一の工場」にするための法則が、ISOの原則だったというわけだ。
著者は、ISO審査員としての人生を再スタートする。
日本の土壌にグローバル・スタンダードを根付かせるために
「ISO規格という、ともすれば企業にとって制約にもなりかねない基準を順守することが、むしろ事業の発展、企業の成長を促すのだと著者は指摘する。それどころか、日本人のありようそのものにまで影響を及ぼす、とその可能性を高く評価している。
具体的にはどういうことなのか。著者は第二章でトーンを一転させ、日本の文化をひもとくために「上士文化と足軽文化」の分析を試みる。立派なリーダーが多く生まれた幕末までの間、彼らが土台にしていた「上士文化」は次第に日本人から失われていき、幕末以降はもちろん、現代に至るまで、日本人の文化は「飲む・打つ・買う」の「足軽文化」に堕したというのが著者の見方だ。
ともすれば、欧米のマネジメントシステムであるISO、つまり世界的なグローバル・スタンダードを取り入れることに抵抗のある経営者や現場責任者もいるに違いない。体面を保つためだけに導入するといった企業もある。著者もそうした壁に何度もぶつかっている。だが、それでも奏功した事例が多く取り上げられているのは、著者が「日本古来の文化との相似点」を見出しながら、日本の土壌に合うようにISOの苗を植えたからだろう。
「世界の潮流はこうなんだ」とゴリ押しするような、木に竹を接ぐがごとき改革を実行しても、効果は出ないし根づかない。本書は、現代日本にこそ必要な視点を与えてくれる。
文=梶原麻衣子
【著者プロフィール】
河本 亮(かわもと・まこと)
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