長期におよぶ,ある少年との心理療法のプロセスを治療者とクライエントの心の通いあいを軸にたどった本書初版は,幾度か版を重ねてきたが,今回大幅な修正と新たな論考を加えて増補改訂版を刊行することになった。
子どもの心理療法において,セラピストは,何を考え,どんなことを感じるのだろうか。クライアントに対する基本的態度とはどういうものなのか。また,言葉による表現力を持たない子どもとのかかわりあいにおいては,言葉を越えて感じられる交流が大きな意味を持ち,その実践はどのようなものか。
精神分析的心理療法を治療基盤とする著者は,アンナ・フロイト,クライン,スターン,ウィニコット,ストロロウらの理論と技法を援用しつつ,日常臨床における具体的な知見,見立てと初回面接,言葉の使い方,身体接触,治療の終わり,そしてクライアント・セラピスト間に展開する転移・逆転移などの臨床治験を間主観的な観点からわかりやすく解説している。精神分析的心理療法における治療構造の理解と子どものセラピーの基本を身につけるための,懇切丁寧な臨床指導書である。
序 章 出会いまでーー子どもを迎える準備
第1章 心理的に安全な空間づくりーー初回面接
●自閉症の子どもの言動に対症関係を読みとることをめぐって
第2章 心の通いあいの芽ばえーー週1回の心理療法開始
第3章 臨床的理解と方針ーー発達的観点に基づいたアセスメント
第4章 心理療法の展開ーー関係性の中に読みとる心の流れ
●セラピストの情緒的アヴェイラビリティ(emotional availability)をめぐって
●対象の在・不在のテーマをめぐって
第5章 二人の間のストーリーーー分離と再会
●相互交流を“文脈的(contextual)に”読む
第6章 不在・喪失をめぐる情緒の交流ーー突然の終結に向かって
●アーティキュレーション(articulation)
●“共にある”ありかた,コミュニオン(communion)について
終 章 心理療法の外の状況ーーそして,心理療法のその後
補論1 関わりをめぐる精神分析的視座ーー日々の臨床実践の中で
補論2 心を抱えることと,抱えられることーー喪失をめぐる間主観的な臨床体験
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