★★★★★「お酒もあるし、カクテルだって作れますよ。ヴァイオレットフィズだって出来ますよ。ただそんなの普段のメニューにはありませんけどねーー」投稿された詩を見つけた亜紀は、その詩が背景となる地へ旅に出た。旅先で出会った看板の無い店の店員の山野は優しく道案内をしてくれるのだが、亜紀が山野に何かの変化を与えていた。亜紀が結び付けてしまったのは詩の投稿者と誰なのか。山野がここにいる理由と断片的な記憶の欠片は混迷の中に。知らずと関わる亜紀は、姿の見えない投稿者とその詩の背景を解くことができるのか。山野の境遇に自分を重ねる亜紀。亜紀の詩をきっかけに記憶の欠損に気付いてしまった山野。ふたりが始めた謎解きに、解いてはいけない過去が浮かび上がる……。この小説は表紙のイラストが美しい。物語の空想へ誘う。異例のA4版の理由の一つ、それは装画を見て欲しいから。SF作品だが、恋愛小説か謎解きか推理か文芸なのか、旅行記か詩集か、過去の実話か現代の記録か未来の推定か。冒険なのか無謀なのか、幸運か不幸か、解けるのか解けぬのか、都心なのか郊外なのか、一人なのか複数なのか。この物語にはいくつものキーワードが絡み合っている。寝室に置いて毎日1章、ひと月ほどで読み切れば、充実した1ヶ月が送れるかもしれない。夏休みやクリスマスの贈り物として逸品に化ける可能性がある。驚きの結末は、充実した完読感に満たされ、すぐに表紙画を見直したくなるはず。また長野県の自然を愛する人にはぜひ読んでほしい一冊だ。
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