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時代を超えて、闇は残る 「社会派推理小説」というジャンルを確立した国民的作家・松本清張。格差、差別といったタブーを恐れずテーマとして取り上げる姿勢、地方から中央を相対化する視線により、その作品には昭和という時代の闇が刻印されている。代表作の数々を「鉄道」と「天皇」に注目して読み解き、歴史の暗部に光をあてる。 はじめに──昭和史の闇を照らす 第一章 格差社会の正体──『点と線』 香椎とはどんな土地か 近現代的な視点と古代史的視点の共存 アリバイ崩しに挑む『点と線』 寝台特急「あさかぜ」の登場 急行の旅から香る「時代の空気」 難行苦行としての鉄道の旅 特急と急行から“格差”が見える 四分間のトリック 現実の人間を描く 物語を動かす女性の心理 『点と線』はなぜ古びないのか コラム 「あさかぜ」の思い出 第二章 高度経済成長の陰に──『砂の器』 『砂の器』とその時代 中年刑事が見た新進芸術家集団 ヌーボー・グループの中の格差 住宅事情に見る暮らしの現実 太平洋側と日本海側の“落差” 経済成長から取り残されたもの 事実に基づくトリック 東京中心史観の相対化 想像を絶する落差 時代の矛盾に目を向ける コラム 昭和の車内とお伊勢参り 第三章 占領期の謎に挑む──『日本の黒い霧』 『小説帝銀事件』から『日本の黒い霧』へ 「GHQの謀略」という史観 今に続く米軍基地の問題 大岡昇平の清張批判 清張が目指したこと 第四章 青年将校はなぜ暴走したか──『昭和史発掘』 「オーラルヒストリー」の先駆け 軍事クーデターとしての二・二六事件 明治の再来としての昭和 直訴の頻発と政党政治の終焉 皇道派と統制派の対立 幻の宮城占拠計画 清張が三島の認識を変えた? 中橋基明の挫折 夜明けに中橋は何を思ったか 秩父宮と安藤輝三 理想の天皇像は秩父宮? 天皇の弟、秩父宮 処刑された当事者たち 貞明皇后と昭和天皇の確執 コラム 秩父宮はなぜ東北本線で上京しなかったのか 第五章 見えざる宮中の闇──『神々の乱心』 全精力を傾けた未完の遺作 裏で権力を持つ女性 「次男」という存在 アマテラスの弟・ツクヨミ 「神々の乱心」の意味 見えないものを書く 史料公開で明らかになった清張の先見性 結末のシナリオを予想する 終 章 「平成史」は発掘されるか 歴史家・思想家としての松本清張 『平成史発掘』のテーマ 「おことば」と祈り 平成から令和へ おわりに
レビュー(12件)
昭和とはなんだったのか?社会派推理作家の作品を通して、昭和を振り返りその時代背景や、闇に切り込み考察します。読み手の想像力を刺激する本であり、松本清張ファンならずとも楽しめる一冊です。
流石 清張さん
清張さんの小説も織り交ぜながらなので、興味深い内容で 届いたらその日の内に読み終えた