本書は中沢新一氏が新進気鋭の哲学者・國分功一郎氏とぜひ対談をしたい、というところで実現した対談を収めたものです。 まず3・11後の福島第一原発事故を顧みて、エネルギー問題を哲学的のみならずいろんな視点で模索するところから二人の対談がはじまります。中盤は哲学者を中心に歴史上のいろんな思想が出てきて、予備知識がないとやや難しい内容でした。後半の「どんぐり民主主義」の章では國分功一郎氏が参加する東京都小平市の小平中央公園の雑木林保存運動の話になり、私のような凡人でも分かりやすくかつ面白い内容になっています。 これは道路建設を進めるにあたって雑木林が邪魔にりそれををつぶすという自然に抗う行為と、自然的なものの対極にある原発という装置は、自然の摂理にからみてどうなのか、疑問を呈するというものです。そして人間も自然と共存するのが望ましいのではないか、という内容に仕上がっています。 ポスト3・11の思考法を切り開くには「知」だな、と痛感させられました。 中沢氏・國分氏双方ともラジカルな「脱原発論」を展開することなく、あらゆる思想を引き出しにして語っているので説得力があります。 本書は(笑)マークがつくほど軽妙なタッチで対談しているハズなのですが、「贈与」と「交換」の意味などある程度押さえておかないと「何故ここで(笑)なんだろう、自分はちっとも(笑)にならないんだけど」と思うことか何か所かあり、おのれの無学さを痛感させられました。 なお本書を読む前にあたっては、文中に幾度か登場する國分功一郎著「暇と退屈の倫理学」と中沢新一著「日本の大転換」を読んでおいた方が理解しやすいかもしれません。私は既読の「日本の大転換」の予備知識があったので、中沢新一氏の論調は分かりやすかったです。3・11後を自分なりに読み解くのに限界を感じ、人間と自然の関係性を追究したい、と思っていた私には本書の対談は難しくともタメになった、といえましょう。
レビュー(12件)
ポスト3・11のパースペクティヴ
本書は中沢新一氏が新進気鋭の哲学者・國分功一郎氏とぜひ対談をしたい、というところで実現した対談を収めたものです。 まず3・11後の福島第一原発事故を顧みて、エネルギー問題を哲学的のみならずいろんな視点で模索するところから二人の対談がはじまります。中盤は哲学者を中心に歴史上のいろんな思想が出てきて、予備知識がないとやや難しい内容でした。後半の「どんぐり民主主義」の章では國分功一郎氏が参加する東京都小平市の小平中央公園の雑木林保存運動の話になり、私のような凡人でも分かりやすくかつ面白い内容になっています。 これは道路建設を進めるにあたって雑木林が邪魔にりそれををつぶすという自然に抗う行為と、自然的なものの対極にある原発という装置は、自然の摂理にからみてどうなのか、疑問を呈するというものです。そして人間も自然と共存するのが望ましいのではないか、という内容に仕上がっています。 ポスト3・11の思考法を切り開くには「知」だな、と痛感させられました。 中沢氏・國分氏双方ともラジカルな「脱原発論」を展開することなく、あらゆる思想を引き出しにして語っているので説得力があります。 本書は(笑)マークがつくほど軽妙なタッチで対談しているハズなのですが、「贈与」と「交換」の意味などある程度押さえておかないと「何故ここで(笑)なんだろう、自分はちっとも(笑)にならないんだけど」と思うことか何か所かあり、おのれの無学さを痛感させられました。 なお本書を読む前にあたっては、文中に幾度か登場する國分功一郎著「暇と退屈の倫理学」と中沢新一著「日本の大転換」を読んでおいた方が理解しやすいかもしれません。私は既読の「日本の大転換」の予備知識があったので、中沢新一氏の論調は分かりやすかったです。3・11後を自分なりに読み解くのに限界を感じ、人間と自然の関係性を追究したい、と思っていた私には本書の対談は難しくともタメになった、といえましょう。