面白い着眼点、天皇もなかなかしぶとい処世術を発揮していて総体的に決して傀儡ではない。 室町時代の基本的知識が必要かもしれないが、自身の知識の積み上げには有益。,“皇位”というモノは、継承権が在ると見受けられる何人かの中から選ばれた継承者が受継ぐ訳だが、概して「天皇の子や孫」か「天皇の兄弟」か「天皇の兄弟の子」ということで受継がれて行った。そういうことになると、「A皇子の系統」、「B皇子の系統」と皇位継承権を有する人達の系譜に分裂が生じる。 こうした皇位継承権者の系譜に分裂が生じるような事象は古くから何度も見受けられるのだが、「南北朝時代」という状況に入って行く前段の鎌倉時代後半には「大覚寺統」と「持明院統」との分裂が少し「拗れて」しまったような感になっていた。そして所謂「建武新政」の起こりと挫折、室町幕府発足から日が浅かった頃の混乱というような状況の中、後世に「南北朝時代」と呼ばれる状況が生じるのである。 皇位継承権者の系譜に分裂が生じるような事象は「大覚寺統」(南朝)と「持明院統」(北朝)ということに留まらず、実は「持明院統」(北朝)の中でも生じてしまったという経過も在る。 「南朝」は「飽くまでも理想を追う」というような在り方を目指したのに対して、「北朝」は「飽くまでも生き残る」というような在り方を目指したのかもしれない。その「北朝」が如何にして生き残り続けたのか?それが本書のテーマになる。 「北朝」というモノは、「室町幕府」が統治者として君臨する“権威”を獲得するために「丸抱え」を図ったモノであり、「北朝」の側でも生き残りのために「抱えられることにした」という、独特な「共存体制」なのだった。それが何代にも亘って継続し、やがてその「室町幕府」と「北朝」との「共存体制」が維持し悪くなって行く。 本書ではこういう事柄に関して、様々な史料から判る多彩な挿話を織り込みながら判り易く説いている。全体として、深い思惑が一致して共謀的な関係に在りながら、関係者個々人の性格や相性で色々と揺れる経過も交えて、長く続いた両機関の数奇な物語という感じに纏まっているかもしれない。少し夢中になってしまった…ハッキリ言えば、「小説やテレビドラマの主人公のモデル」というような人物達が多く居る訳でもない、室町時代の将軍や天皇というような人達に関して、「何となく動き回る様子、交わしている会話の感じ」が思い浮かぶような内容が綴られた本書は、単純に酷く面白かったのだ…
レビュー(13件)
面白い着眼点、天皇もなかなかしぶとい処世術を発揮していて総体的に決して傀儡ではない。 室町時代の基本的知識が必要かもしれないが、自身の知識の積み上げには有益。
“皇位”というモノは、継承権が在ると見受けられる何人かの中から選ばれた継承者が受継ぐ訳だが、概して「天皇の子や孫」か「天皇の兄弟」か「天皇の兄弟の子」ということで受継がれて行った。そういうことになると、「A皇子の系統」、「B皇子の系統」と皇位継承権を有する人達の系譜に分裂が生じる。 こうした皇位継承権者の系譜に分裂が生じるような事象は古くから何度も見受けられるのだが、「南北朝時代」という状況に入って行く前段の鎌倉時代後半には「大覚寺統」と「持明院統」との分裂が少し「拗れて」しまったような感になっていた。そして所謂「建武新政」の起こりと挫折、室町幕府発足から日が浅かった頃の混乱というような状況の中、後世に「南北朝時代」と呼ばれる状況が生じるのである。 皇位継承権者の系譜に分裂が生じるような事象は「大覚寺統」(南朝)と「持明院統」(北朝)ということに留まらず、実は「持明院統」(北朝)の中でも生じてしまったという経過も在る。 「南朝」は「飽くまでも理想を追う」というような在り方を目指したのに対して、「北朝」は「飽くまでも生き残る」というような在り方を目指したのかもしれない。その「北朝」が如何にして生き残り続けたのか?それが本書のテーマになる。 「北朝」というモノは、「室町幕府」が統治者として君臨する“権威”を獲得するために「丸抱え」を図ったモノであり、「北朝」の側でも生き残りのために「抱えられることにした」という、独特な「共存体制」なのだった。それが何代にも亘って継続し、やがてその「室町幕府」と「北朝」との「共存体制」が維持し悪くなって行く。 本書ではこういう事柄に関して、様々な史料から判る多彩な挿話を織り込みながら判り易く説いている。全体として、深い思惑が一致して共謀的な関係に在りながら、関係者個々人の性格や相性で色々と揺れる経過も交えて、長く続いた両機関の数奇な物語という感じに纏まっているかもしれない。少し夢中になってしまった…ハッキリ言えば、「小説やテレビドラマの主人公のモデル」というような人物達が多く居る訳でもない、室町時代の将軍や天皇というような人達に関して、「何となく動き回る様子、交わしている会話の感じ」が思い浮かぶような内容が綴られた本書は、単純に酷く面白かったのだ…