これまでの経過を振り返り、改めて思わされることの一つは、バイオテクノロジー(生命工学)の急速な進展です。僅か数か月の間にも、次々と新しい事柄が起こっているという事実です。それに伴い、出生前診断もまた、急速に医療の現場に広がっている、と推測されます。このところマスコミ紙上におきましても、「最近急速に普及している出生前検査」という言葉も見受けられ、そのことを裏づけています。これを一口に進歩と呼ぶか、あるいは人間存在の危機が一段と深まったと考えるかは、さまざまであると思いますが、わたしたちは明らかに後者であって、事態はますます深刻になりつつある、という認識を持っています。単に障害者にとっての危機であるということだけではなく、全人類の滅びをもたらす糸口にもなりかねないという危惧を持っています。たとえば、人のいのちを軽視し、人間の恣意的な判断によって容易に奪い得るということは、社会秩序の根底をゆるがすだけではなく、戦争を引き起こし、遂行する心理にも通じるからです。この危機感に押し出されて本書が生まれた、と言ってもよいでしょう。
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