【POD】パラグアイ、ニェンブク県の国立ピラール大学における学生卒論指導奮闘記
本書では、南米パラグアイにおける大学生の学生卒論指導を通じた形で、野外での土壌の合理的肥培管理と作物・野菜類の生産に関する事項に的を絞って、取りまとめたものである。 実際、筆者が取り組んだパラグアイのニェンブク県の約80%以上が大湿原地帯であり、その中に県庁所在地のピラール市が存在する。しかしながら、大部分が天水依存の農業であれ、また、降水量も年間を通じて不安定であり、農業の生産性も不安定であるといえる。そういう環境の中でも、小農にとっては貴重な現金収入源であり、この地域の土壌の合理的肥培管理による農業生産は重要である。 筆者は、以前のパナマやブラジル等のラテン諸国における農業技術協力経験(野外での基礎研究ならびに普及教育)の他、スペイン語での学術論文掲載・ラテンアメリカの学会発表等の経験が買われ、配属先である国立ピラール大学農牧地域開発学部において、学生教育の他、卒業論文の指導教官という大役を仰せつかった。これは、当時、驚きが隠せなかったが、前記国々では、試験場勤務かつ基礎研究がメインであったため、JICA関係者も含めて、その成果がなかなか評価されてこなかった(血の通った協力ではないという先入観)。ところが、大学配属の場合、基礎研究と同時に学生教育という仕事もあり、これこそ、若手人材育成に貢献できる事項であり、また、卒業論文指導はその要である。実際、JICA関係者の私信も含めて、スペイン語圏で農学領域の学生卒論指導と行ったという日本人は皆無に等しく(カウンターパートのサポートとしての論文指導補助のケースはあろう)、おそらく、当時としては、筆者が初の日本人であったものと推察する。それゆえ、過去にそのような事例がなく(筆者が見つけられなかったか?)、同大学の学生の基礎学力の実情等、筆者自身、空回りすることが多く、正しく、奮闘記と記して過言ではないだろう。 結論から記して、2年8ヶ月(同大学の強い要望により、同国教育省大臣を通じて、JICAより8ヶ月延長許可を得た)の任期の中で、無事、9名の学生卒論指導を完結させ、ニェンブク県における学生教育(若手人材育成)の他、農牧生産における貴重な基礎データー輩出にも貢献できた。その功績により、2012年6月、筆者は同学部客員教授に就任した。 本書で紹介する基礎研究内容は、灰黒色砂壌土(米国の包括分類法でエンティソルに類別)の肥培管理と農牧生産(作物、野菜類、牧草類)の他、沼沢植物を活用した乳牛の生乳生産にまで及んでいる。また、同学部若手研究員との共同研究成果も含まれている。 実際、国内外であれ、わが国の農学部学生、若手研究者、普及員や生産者らにとって、土壌条件に応じた合理的な肥培管理と作物・野菜生産において、参考的な知見が得られるものであるならば、筆者としても幸いである。
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