西暦2千年という人類史の大転換期、コンピューターネットワークに支配されていく現代人の、生きることの意味への問いが、この小説の主題です。現代は科学的唯物論が支配的ですが、世界ではまだ宗教も大きな意味を持っています。しかし、太平洋戦争で古来の精神的支柱である祖霊信仰的価値観を失ったのが日本人です。そういう日本人の1人である「僕」の知的障害の娘を通しての新生物語です。 敗戦によって魂(心の安住の地、よりどころとする世界観)を失った主人公「僕」は、懐疑的で虚無的な生き方をしてきた。一方、妻を亡くし、知的障害の娘との関わり方にも苦悩する。心身共に病にむしばまれて、死の恐怖に見舞われながら定年期を迎える。霊能者に会うが救いとはならなかった。健康で幸福な(ウエル)生き方(ビーイング)を求めて催眠法、ヨーガを遍歴する。それらの技術と思想を通して生命の神秘に触れ。二一世紀、コンピューター文明の勃興による人間喪失の世界情勢を尻目に、生命論的世界観による幸福(ウエル・ビーイング)に至る心の道筋をたどる。
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