孤高の児童精神科医・小倉清と村田豊久が語りつくす子ども臨床の世界
「発達障碍」診断の濫用は逆に子どものこころを置き去りにし、今や脳は見てもこころは見ない臨床家がどんどん産み出されている──そうした現実のなか,二人の児童精神科医が子どものこころの臨床の神髄を語る。
小倉清と村田豊久による座談会。聞き手は,小林隆児。子どもへの温かさ,児童精神医学への思いが語られる。
一、子どものこころの臨床をめぐって
子どもの精神科医療の現状
国際診断基準DSMについて
どのようにして子どもの精神科医になったか
子ども時代と戦争体験
読書と映画に没頭した思春期
子どもをいじめた体験
子ども時代のPTSD
乱暴だった子ども時代
ドストエフスキーに救われた
子ども時代の体験と子ども理解
子どもへの同一化
面接と陪席
子ども臨床の醍醐味
鋭い観察力を生んだ子ども時代の体験
忘れられない子ども時代のエピソードの数々
子どものこころの「不思議」に感激する
子ども時代の惨めな体験
男の子への優しさが生まれた背景
前思春期の臨床の面白さ
小学五年の時のエピソード
自分の過去を振り返ることの大切さ
乳幼児期の体験が人生の核
犯罪者に対する強い好奇心
人間に対する飽くなき好奇心
乳児観察の大切さ
二、昨今の発達障碍ブームについて
何でも発達障碍という時代
障碍の理解と子どもの理解
脳の異常と心の問題は別物
母原病時代の反動
精神医学と自然科学
アスペルガーとカナー
臨床におけるエビデンス
障碍を持つ子の生き様を描く
親子の間で起こる劇的な変化
鳥肌が立つような臨床の醍醐味
臨床の勘所
自分に対して正直であることの大切さ
学会発表での傷つき体験と奮起
対談を終えて
小倉 清
村田豊久
小林隆児
レビュー(3件)
名著
現在の「発達障碍」ブームと呼べる現象に警鐘を鳴らす対談。 “診断はレッテル貼りでない”と言われながら、現実は差別や、特別扱い(特別支援ではない)、一部教師の責任放棄を招いている現状を正面から論じている。 特に、「科学的理解」の偏重に伴い、子どもの思いや個別の苦しみをなおざりにしている“専門家”の姿勢についての箇所は至玉の一言に尽きる。 “心理至上主義”で環境を無視し現実の生活を軽んじる心理臨床の流れから“脳科学至上主義”や早期発見早期療育の名のもとに管理を強め子どもをのものを見ない発達障碍支援を一考を促す本書は、『専門家』を自認するなら必読であろう。