国連人権理事会をはじめとする世界的な人種主義をめぐる議論においては、日本の部落問題は当然のごとくそのなかに位置づけられている。にもかかわらず、日本国内でまだその認識が薄い。しかし明治以後、部落問題は「人種が違う」といった「人種」のアナロジーとして常に語られてきた。そして、こういった語りは、まぎれもなく近代が創り出したものであり、部落問題はたんなる封建遺制ではなく、近現代社会が存続させてきたものである。本書は、明治から現代まで、様々な「部落」についての言説やその差別の思想・論理を丁寧に跡づけながら、国民化の語りのなかで人種主義(レイシズム)を形成し、部落差別を継続し続けてきた近現代日本社会のありようを問い直す。
はじめに
一 「人種」という語りの成立
1 「種姓」観念と「天理人道」
2 人類学による「学知」の付与
3 「習慣ハ第二ノ天性」
二 もう一つの「人種」
1 被差別部落の〈発見〉
2 「特殊部落」という「人種」
3 起源論による対抗ーー大和同志会
三 「人種」から「民族」へ
1 「同一民族」のなかの「異種」
2 「人種」と「民族」のはざま
3 「階級」による「烙印」の消去
4 「日本民族」への包摂
四 「人種」という語りの「消滅」/その後
1 「特殊部落」という語り
2 「市民社会」の陰ーー中上健次の作品と思想から
3 「被差別部落」という語りの無化/後退
参考文献
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