永井荷風の文学世界でとりわけ有名なのは『墨東綺譚』と玉の井である。「赤線玉の井、ぬけられます」として知られるが、実は赤線ではない。赤線は公娼だが、私娼、イリーガルな売春婦の街なのだ。荷風が最初に訪れた年には、玉の井バラバラ殺人事件が起こり、時に「魔窟」とも呼ばれた街に荷風は足繁く通い、ルポ文学のような形で物語を生み出した。それはどうしてなのか。そんな場所を描きながら、新聞小説として、木村荘八の挿絵とともに知られる荷風と玉の井。明治大学で近代文学を講じる若手研究者、嶋田直哉がその荷風と玉の井に注目し、『墨東綺譚』から『断腸亭日乗』と『寺じまの記』などを含めて政治学、図像学、地政学などのこれまでにない視点で論じて、荷風と玉の井の秘密を解き明かす。
第一章 永井荷風の復活ー『つゆのあとさき』/第二章 ヒモと金の物語ー『ひかげの花』/第三章 『墨東綺譚』の読まれ方/第四章 玉の井への道程ー『断腸亭日乗』と『寺じまの記』/第五章 玉の井の政治学/第六章 玉の井の図像学/第七章 玉の井の地政学/第八章 報告文学の季節
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