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これこそ、SFだけが流すことのできる涙。 ●小松左京氏推薦ーー「未だ終わらない核の恐怖。21世紀を生きる若者たちに、ぜひ読んでほしい作品だ」 第三次世界大戦が勃発、放射能に覆われた北半球の諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国原潜〈スコーピオン〉は汚染帯を避けオーストラリアに退避してきた。ここはまだ無事だった。だが放射性物質は確実に南下している。そんななか合衆国から断片的なモールス信号が届く。生存者がいるのだろうか? 一縷の望みを胸に〈スコーピオン〉は出航する。迫真の名作。訳者あとがき=佐藤龍雄/解説=鏡明 *映画『渚にて』(1959年/スタンリイ・クレイマー監督)原作 *テレビ映画『エンド・オブ・ザ・ワールド』(2002年/ラッセル・マルケイ監督)原作
レビュー(91件)
まったく希望のない世界
小説のストーリーは絶望でしかないです。それを通り越しても希望すらない。ただ死んでゆくだけ。 もしかして隣国でいろいろと紛争が起きそうだと感じる今日この頃、妙にリアルな感じで読みました。 2000年のテレビ映画を数年前に見ました。 艦長さんのスタンスや、ラストがちょっと違うのですね....
人類滅亡を待つ人々
近未来の小説ですが、舞台は過ぎ去りし時代。第三次世界大戦後の世界を現した、少し昔のSF小説です。滅亡の時を待つ人々の精一杯の生き様が描かれています。この作品に描かれていることが起これば、今の時代の人たちであれば、この様な静かなときを遅れるのか、ということを考えさせられる作品です。
息子が英語版を授業で使っていて、小論文用に日本語版を購入しました。 内容も面白くどんどん引き込まれていくと言ってました。
あくまで淡々と。
第3次世界大戦が勃発して、コバルト爆弾によって北半球全体が放射能汚染されてしまった世界の話です。 そういう状況の世界なので、北半球から南半球に徐々に放射性物質が流れてくる、という事になっています。 舞台はまだ放射性物質が降り注いでいないオーストラリアです。 主人公は米国原子力潜水艦「スコーピオン」のアメリカ人艦長ドワイト・タワーズか、その部下であるオーストラリア人連絡士官ピーター・ホームズか。ピーターには妻メアリと乳児の娘ジェニファーがいます。ホームズ夫妻の友人である若い女性モイラ・デイヴィッドスンというのが出てきて、ドワイト・タワーズにすっかり惚れ込み、まとわりつきます。アメリカは完全に放射能汚染されていて生き残りはまずいません。ドワイト・タワーズを含め、潜水艦乗組員の家族は絶望的状態です。 そして今は無事な南半球にあるオーストラリアも、数ヶ月後には放射性物質が降り注ぎ、生物は全て死滅する、と言うことがわかりきっています。 こうした絶望的状況の物語が、極めて淡々と進行していきます。 登場する一般市民も事態は把握しています。何も悪いことをしていないのに、絶対に避けようのない確実な死が迫り来るのを、理解しつつもそれを無視して別の何か日常的なことに熱中・没頭したり、放射線障害で苦しんで死ぬよりも安らかな死を迎えるための薬物を用意したり、現実逃避でアメリカに住む家族のためにお土産を買いそろえたりします。 たまたま今やっているPS3のゲーム「fallout3」がまさしく核戦争後の放射性物質に汚染されまくっている世界が舞台で、しかもその戦争は2077年なのに、ゲーム世界は非常に不可思議なことに1950年代の文化に染まっています。その意味は不明ですが、「渚にて」は1957年の作品であるため、やたらとあちこちで雰囲気が当てはまるので妙に臨場感がありまくりです。 その上、現実世界では福島第1原発から放射性物質が広範囲に降り注いでいると言うこともあります。 どんどん読み進んでいきました。 そしてなんたる何の救いもない結末。 すばらしいです。 ただひたすら、全ての人々が死んでく。淡々と死んでいきます。 まっくもって珍しいSF小説です。
以前から気になっていた本です。レビューに後押しされて購入しました。 人類が滅びるためには世界規模の戦争でなくてもいい、 と言うのが恐いですね。