PTSDをはじめとする心的外傷を受けた人びとの精神障害に対して、精神分析はどんな役割を果たし得るのか?ガンザレインとビュークリの仕事は、フロイトの最も根源的な課題をフロイト自身およびフロイト以後の精神分析の認識と技法に依拠して現代的な形で達成する画期的な試みである。ここで語られる内容はかなり衝撃的なものを含んでいる。そこには、臨床家としての率直な発言がある。あくまでも近親姦の体験者は親の被害者、虐待の犠牲である。この認識そのものは正しい。しかし、それと同時に、その犠牲者、被害者の心の深層にある種の倒錯した心性が生まれることも、そしてまたこの心性の臨床上の意味あいをもあえて語らねばならないというのが本書の姿勢である。原著者があえてタブーに挑戦し、精神分析家としてのアイデンティティを全うされたことは、今日の精神分析全体の動向の中でまさに「フロイトを越えた」意義を担っている。
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