「生まれかわったら人間だ! 往生しろよ」と照は大声を張り上げていた。 おらは必死になってテリーの首輪をつかんだ。テリーは、気が違ったように吠え続けた。(母犬の愛) 母が心筋梗塞でこの世を去った。 今日までの一週間、わたしは母の死を受け入れることを、心のどこかで拒んで来た。(母子クライシス) -あッ、また亭主が暴力を振るっているんだ。 秀子は、ドアノブに手を掛けることもできず、固唾をのんで隣の様子を窺っていた。 ……気が付くと、隣からの物音は絶えていた。月のない夜で、夜空に青白い街灯の明かりが、霞のように霞んでいる。(裁判員裁判) 母親の愛とは何かをテーマに描いた表題作をはじめ、モラルと法律、人を裁くことの是非を問う「裁判員裁判」など、抑制した文章で綴った全五篇を収めた短編集。
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