何が分からないかが分かるーー、これは素晴らしい技能と言える。ある学問分野において何が分かっていないのかを正確に説明できるのは、その分野を相当に理解している人だけだ。
本書では、「心にとって時間とは何か」がどれだけ未知であるのかを探る。私の専門は哲学だが、哲学だけでなく科学についても、さまざまな知見を参照していこう。だれにも分かっていないことを謎としてうまく描き出すには、それがどのような知識によって囲まれているかを示さなくてはならない。私たちの知識の地図に、未踏の地の「輪郭」を描き込んでいくわけだ。
あとで改めて言い添えるが、私はこの目的のために、章ごとに違うサブテーマを定めた。〈知覚〉、〈自由〉、〈記憶〉、〈自殺〉、〈SF〉、〈責任〉、〈因果〉、〈不死〉という、各章の章題がそれにあたる。つまり、少なくとも八つの謎が本書には描き出されており、それらの不思議さや面白さ、そして、一つの謎から別の謎への道が見えてくる高揚感とが、私なりの言葉で綴られている。
第一章 〈知覚〉--時間の流れは錯覚か
第二章 〈自由〉--私はいつ決めたのか
第三章 〈記憶〉--過去のデッサンを描くには
第四章 〈自殺〉--死ぬ権利は、権利なのか
第五章 〈SF〉--タイムトラベルは不可能か
第六章 〈責任〉--それは、だれかのせいなのか
第七章 〈因果〉--過去をどこかに繋ぐには
第八章 〈不死〉--死はいつまで続くのか
8つのテーマと謎を手がかりに、「心と時間の不思議」に迫る!
第一章 〈知覚〉--時間の流れは錯覚か
第1節 ここまで生きてきた、というのは冗談 第2節 バーバーポール説 第3節 過去の影、未来の影
第二章 〈自由〉--私はいつ決めたのか
第1節 意思決定の時点の掴めなさ 第2節 健全な不確実性 第3節 本気で選ぶとは、どういうことか
第三章 〈記憶〉--過去のデッサンを描くには
第1節 時続きの記憶 第2節 過去のデッサン画 第3節 五分間の僥倖
第四章 〈自殺〉--死ぬ権利は、権利なのか
第1節 私の、私による、私のための死 第2節 自殺の理想と現実 第3節 自殺の「他殺」性
第五章 〈SF〉--タイムトラベルは不可能か
第1節 タイムトラベルを分類する 第2節 タイムトラベルの物理 第3節 時制とパラドックス
第六章 〈責任〉--それは、だれかのせいなのか
第1節 責任の一部を受け渡す 第2節 理想主義と構成主義 第3節 非難から修正へ
第七章 〈因果〉--過去をどこかに繋ぐには
第1節 もし、ああではなかったら 第2節 あの原因、この記憶 第3節 因果的、そして空間的な「私」
第八章 〈不死〉--死はいつまで続くのか
第1節 限られた不死と、真の不死 第2節 塵のなかの時間 第3節 新たな死者としての私
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