パンデミックの時代、大震災の時代、革命と戦争の時代に『カリガリ博士』は愛され、恐れられ、語り継がれたーー
近代日本の文学者は『カリガリ博士』の何に魅せられ、そこから何を汲みとったのか。日本のモダニズム、ミステリ・ジャンル、幻想とホラー、表現主義の受容、そしてこの百年の映画と文学の深い交渉について考察する。
【目次】
序章 百家争鳴ーー 『カリガリ博士』を愛した日本文学
第1章 佐藤春夫と『カリガリ博士』-- 「指紋」をクロースアップする
1、『カリガリ博士』を誤読する
2、阿片の夢と映画
第2章 江戸川乱歩と「カリガリ博士」-- 恐怖のメディアとしてのパノラマ
1、『カリガリ博士』と「映画の恐怖」
2、映画的視覚性の展開ーー 「火星の運河」から「パノラマ島綺譚」へ
3、「 アルンハイムの地所」「金色の死」から「パノラマ島綺譚」へーーあるいは庭園譚における古きものと新しきもの
4、曲線と触覚ーーあるいは支配の完成と芸術の完成
第3章 谷崎潤一郎と『カリガリ博士』-- 映画哲学の挫折
1、谷崎も参った
2、初期谷崎の映画小説ーー 「秘密」の映画館から「人面疽」まで
3、ポスト『カリガリ博士』の映画小説ーー 「肉塊」「アヹ・マリア」
4、「青塚氏の話」-- 盗まれた「映画哲学」
第4章 内田百間 と『カリガリ博士』--パンデミックの恐怖と幻想
1、『カリガリ博士』と表現主義映画
2、暗くなる土手ーー 『冥途』の怪異
3、「旅順入城式」--触覚的なまなざしの実践
第5章 芥川龍之介と『カリガリ博士』--終焉の表現主義
1、『カリガリ博士』よりも気味の悪い日常を生きる
2、「影」-- 映画と分身
3、芥川龍之介の書いたシナリオ その1-- 「誘惑」
4、芥川龍之介の書いたシナリオ その2-- 「浅草公園」
第6章 夢野久作と『カリガリ博士』--「ドグラ・マグラ」の父
1、『カリガリ博士』と「ドグラ・マグラ」のテクスト生成
2、「一足お先に」
3、夢野久作と表現主義言説
4、「ドグラ・マグラ」-- テクストにちりばめられた映画
第7章 映画へ/映画からーー 尾崎翠の文学的転機
1、問題の所在
2、尾崎翠と映画との遭遇
3、映画でなければできないことーー1927年「琉璃玉の耳輪」
第8章 尾崎翠と映画の厚み
1、1922年・鳥取の表現主義
2、「無風帯から」「松林」-- 表現主義受容に先駆けて
3、表現主義をパロディ化する
第9章 稲垣足穂ーー 彗星と映画機械
1、『カリガリ博士』への揺れる想い
2、6月の夜の都会ーー ダッシュの街、表現派の街、未来派の街
3、「弥勒」における『カリガリ博士』
終章 『カリガリ博士』の呪いと祝福
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