医学のあゆみ 生物学的相分離と計測技術 292巻4号[雑誌]
・液ー液相分離という古めかしい用語に注目が集まっている。細胞内での相分離は「生物学的相分離」ともよばれ、タンパク質やRNAが相分離して形成する液滴は、生体物質を時空間的に制御する場である。
・アルツハイマー病抗体薬の開発はなぜ難航しているのか? 生物学的相分離をもとに、細胞生物学と分子生物学の狭間で起こる現象を紐解くことで、これらの疑問をうまく説明できることも多い。
・高分解能を追求する開発から一歩進んで、柔軟で動的な集合体をそのまま捉える新たな技術が求められる時代となった。本特集では、最先端の計測技術や、医療や創薬における新しいアプローチを解説する。
■生物学的相分離と計測技術
・はじめに
・ラマン顕微鏡を用いた相分離液滴のラベルフリー濃度定量
〔key word〕濃度定量、ラマン顕微鏡、神経変性疾患、ストレス顆粒、分子クラウディング環境
・シングルセル質量分析イメージングによる細胞の化学情報の可視化
〔key word〕質量分析イメージング(MSI)、シングルセル解析、イオン化、多次元化学分布情報
・高速AFMを用いた分子集合体マニピュレーション
〔key word〕高速原子間力顕微鏡(AFM)、インタラクティブモード、DNA結合タンパク質、分子集合体
・microRNAによる遺伝子発現抑制と相分離
〔key word〕microRNA、mRNA、遺伝子発現、相分離、1分子可視化技術
・凝集と相分離に基づく相分離工学の幕開け
〔key word〕液ー液相分離(LLPS)、オボアルブミン(OVA)/リゾチーム(LYZ)系、液滴ー表面相互作用、相転移過程、相分離工学
・タンパク質液滴からの線維形成の速度論的解析法
〔key word〕タンパク質線維、液ー液相分離(LLPS)、核形成
・核内構造体によるゲノム機能制御ーー近接ラベリング法を用いて
〔key word〕近接ラベリング法、核内構造体、非コードRNA
・O-ClickFCを用いた脂質代謝動態の遺伝子スクリーニング
〔key word〕クリックケミストリー、フローサイトメトリー(FC)、CRISPRスクリーニング、ホスファチジルコリン(PC)
●TOPICS 細菌学・ウイルス学
・レトロウイルスによる胎盤形成:レトロウイルスが持つもうひとつの生き残り戦略
●TOPICS 社会医学
・健康の社会的決定要因と医学
●連載 自己指向性免疫学の新展開ーー生体防御における自己認識の功罪(22)
・LAG-3によるself-pMHC2認識を起点とした恒常性維持機構の解明
〔key word〕抑制性免疫補助受容体、LAG-3、MHCクラス2、self-pMHC2
●細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望ーー臨床への展開(8)
・間葉系幹細胞の磁気ターゲティングによる関節軟骨再生治療の開発
〔key word〕変形性膝関節症、自家培養軟骨移植、間葉系幹細胞移植、磁気ターゲティングシステム
●FORUM 戦争と医学・医療(10)
・戦争と看護ーー史実と体験から想起する
本雑誌「医学のあゆみ」は、最新の医学情報を基礎・臨床の両面から幅広い視点で紹介する医学総合雑誌のパイオニア。わが国最大の情報量を誇る国内唯一の週刊医学専門学術誌、第一線の臨床医・研究者による企画・執筆により、常に時代を先取りした話題をいち早く提供し、他の医学ジャーナルの一次情報源ともなっている。
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