本書は、これまで明らかにされてこなかった多摩の研究会の活動について、散逸する資料の整理と当事者へのインタビューにより調査し記録した活動史である。
そこから明らかになった多摩の研究会の輪郭は、地方自治に特化した研究テーマを設定し、研究者とともに理論的な議論を行うことで、住民自治のための政策手段として制度設計や政策実施のために議論を行い、自治体政策研究を行う活動体であった。そして、市民目線をもって政策的手法を用いた課題解決を行うのは、居住者としての市民であり、労働者としての公務員である自治体職員と研究者であった。このことは、自治体学会の研究手法及び構成員と同様であり、多摩の研究会は自治体職員による政策研究活動のパイオニアであるとともに、自治体学会のプロトタイプだったのである。
自治体職員による自主研究活動の展開は、これまで国が策定した政策の実施機関と考えられていた自治体こそが政策開発の現場であるという、概念の転換をもたらす活動でもあり、自治体や自治体職員による政策研究活動を促進させてきた原動力の一つである。そして、それを切り開いたのが、武蔵野方式の市民参加により自治体の政策の実務に出会い、自治体職員の自主研究活動を支援した松下圭一であった。
本書において、多摩の研究会の概要を明らかにすることは、松下圭一の自主研究グループ活動の支援や、そこから展開した学会設立につながる活動を振り返りながら、その活動が何であったのかを示す。これまで明らかにされてこなかった多摩の研究会の活動をとおして自治体政策研究の黎明期を知ることは、歴史を振り返り未来につなぐものであり、これからの自治体職員が学ぶべきことやヒントがあるものと考える。
はじめに
第1章 自治体職員研修と自主研究活動
1 研究の背景及び目的
2 用語の定義
3 先行研究の概要
4 論文構成及び研究方法
第2章 自治体政策研究活動の変遷
1 自主研究活動の変遷
2 自治体政策研究の変遷
3 小括
第3章 多摩地区の自治体職員による政策研究会
1 松下圭一の職員参加支援
2 武蔵野学派
3 多摩の研究会
4 多摩の研究会の独自性
5 小括
第4章 自治体職員による自治体政策研究活動
1 自治体職員による政策研究活動の変遷
2 1977年 現代都市政策研究会
3 1983年 自治体活性化研究会
4 1984年 全国自主研究交流シンポジウム
5 1984年 全国自治体政策研究交流会議
6 1986年 自治体学フォーラム
7 1986年 自治体学会
8 小括
第5章 終章
1 検討の過程
2 自主研究活動の意義
3 多摩の研究会の足跡
4 松下圭一と自治体政策研究
5 松下圭一と多摩の研究会
・年表 松下圭一と多摩の研究会
鏡諭
・多摩の研究会について1
・自治体学会への関与について
・多摩の研究会について2
・介護保険原点の会について
・鏡諭活動年表
天野巡一
・武蔵野学派について
・通達研究会について
・自治体行政法務研究会について
・先端行政研究会について
・行政技術研究会について
・研究会の秘匿性について
・天野巡一活動年表
参考文献
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