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軍部と革新官僚が手を結び、電力の国家統制が進んだ戦前、「官吏は人間のクズである」と言い放って徹底抗戦した“電力の鬼”松永安左エ門「原爆の洗礼を受けている日本人が、あんな悪魔のような代物を受け入れてはならない」と原発に反対した木川田一隆など、かつて電力会社には独立自尊の精神を尊び、命を賭して企業の社会的責任を果たそうとする経営者がいた。フクシマの惨劇を目の当たりにした今こそ、我々は明治以来、「民vs.官」の対立軸で繰り返されてきた電力をめぐる暗闘の歴史を徹底検証し、電力を「私益」から解き放たねばならない。この国に「パブリックの精神」を取り戻すところから、電力の明日を考える。
レビュー(13件)
戦前の挙国一致体制下でも電力の「民営化」を維持しようとした「電力の鬼」松永安左エ門と、戦後の原子力発電の事実上の「国営化」をもたらした(国家・役人との緊張関係を無くした)平岩外四元東電社長を対比させ、その差を今回のフクシマ原発事故の原因の深層にあるものと見る著者の視点には、強い説得力を感じる。