つくられた格差
: エマニュエル・サエズ/ガブリエル・ズックマン/山田美明
富裕層はますます富み、中間層や貧困層はより貧しくなる真の理由とは?
ピケティの共同研究者による衝撃の研究結果
「過剰な富の集中は民主主義にとって、戦争と同じぐらい有害だ」
格差が極端化するのを防ぐためには、二一世紀の新たな税制が必要だ。本書では後に、この改革を実現するための現実的な案をいくつか提示する。莫大な資産への課税や多国籍企業からの徴税、万人に医療を提供するための財源確保や累進所得税の再構築などである。本書に提示する案が完璧だというわけでもなければ、それ以外に解決策がないというわけでもない。だが少なくともこれらの案は、精度が高く(その導入について慎重に考察し、入念に評価している)、透明性に優れ(税負担の配分の変化や各社会階層の所得や富への影響を誰でもシミュレーションできる)、最新の研究に基づく証拠や理論に裏づけられている。
レビュー(10件)
税に関する様々なデータを提示、比較することでアメリカの税制度にまつわる格差が主に政府や富裕層の思想、国内外の情勢などによって 意図的につくられてきたことを裏付ける内容になっている。 筆者の主張として富裕層に対する適正な課税基準は税収が最大化するまで=最貧困層の利益が最大化するまでだというものがあるが、 貧困層の経済状態がよくなれば当然の帰結として人口増につながると思われるが、温暖化といった環境問題対策にも経済的な問題が関わるわけで そもそも格差をどこまで縮小すべきなのかといった根本的な考察はなかった。 また、格差解消を実現するために国民所得税や富裕税の必要性を挙げているが、その大前提となる自国の多国籍企業の租税回避に対する取り締まりや 課税対象所得のごまかしなどに対する取り締まりをどうやって実現させていくのかといった具体的な記述もなかった。 国際競争の観点から見ると政府が自国の金融産業や大企業を優遇しようとするのは明白なのでフリーライダーの問題が解消される保証がない限り、議論はできない。 筆者はとにかく現実的な格差の問題を埋めることを問題解決の主眼に置いているが、消費税を廃止して国民所得税を導入するといった提案は 富裕層の贅沢な暮らしを間接的に促すことにもなるので少なくとも一般市民の心理的な不公平感は解消しにくいのではないだろうか? たとえば消費税を累進的な仕組みにすれば貧困層を直接支援せずとも、心理的な不満を軽減することは可能である。 格差の問題という漠然としたものと向き合うにあたっては環境問題など、より幅広い視野を確保する必要性を感じる。