筆者は、現代の社会は自己免疫的疾患症状を呈していると指摘する。それは、死と暴力のエコノミーが蔓延し、その状況を回避するために安全保障を強化することが、返って友と敵の区別を崩壊させ、不可避的に自らの友をも傷つけてしまう症状である。こうした現況に対し、本書はデリダの脱構築を方法的に用いることによって、社会や国家が抱える死と暴力のエコノミー構造を暴き出し、21世紀の世界の病理を明らかにする。メディアやアートの概念の意味を限りなく拡大することで、ハイテク化し多様化しながらグローバルに拡散する様々な暴力が、宗教や政治的権力から個人の趣味に至るまで支配する現況を批判的に超えていく方途を提起する。
序 論
1 本書の目的
2 本書の意義
3 本書の考察方法
4 本書の基本構成
第1章 デリダのラディカル無神論と自己免疫概念
1 問題提起
2 デリダの宗教観と自己免疫概念
3 ラディカル無神論と根本悪
4 「宗教なき信仰」と「信」の構造
第2章 メディアタイゼーション時代の〈ユダヤーキリスト〉教
1 「宗教のメディアタイゼーション」とは何か
2 「宗教」の意味論的二源泉
3 キリストという「メディア」とメディアの亡霊化
4 『死を与える』イサク奉献をめぐって
第3章 〈アート〉をめぐる境界と制度
1 『判断力批判』における「装飾(パレルゴン)」の位置づけ
2 『宗教論』における「付録(パレルガ)」と欠如
3 人工補綴としての「パレルゴン」
4 芸術作品の〈制度〉化と〈境界設定〉
第4章 美感的判断力におけるポリティックスとエコノミー
1 カント「存在ー神学的人間主義」のポリティックス
2 エコノミーとミメーシス
3 バタイユ「エコノミー」論の脱構築
4 詩人の「口」のポリティックス
第5章 セキュリティ時代の回帰する暴力
1 趣味のポリティックス
2 〈五感のポリティックス〉と自己触発
3 「吐き気」と「表象不可能なもの」
4 〈絶対的排除〉のポリティックス
5 自己免疫的〈暴力〉の二一世紀
結 論
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