米の新鋭による「遊歩(フラヌール)」小説
ハリケーンの上陸が迫るニューヨーク、ブルックリン。詩人である語り手の“僕”は前年に発表した処女小説で思いもよらぬ評価を受けていた。新たに『ニューヨーカー』誌に掲載された短篇を組み込んで長篇を書くと約束すれば、6桁強の原稿料が前払いでもらえるという。その一方で、“解離”の可能性があると診断された“僕”の大動脈。人工授精のために“僕”の精子を提供してほしいと言い出した親友の女性、アレックス。ニューヨークの街を歩き回ったり、テキサス州マーファで芸術家としてレジデンス生活を送ったりしながら、“僕”は長篇の構想を練る。そして、自分がかつて雑誌を編集していたときに著名な詩人たちとの間で交わしたやり取りを偽造し、小説に取り込むことを思い付く……。
作者はオースターやフランゼンが絶賛する1979年生まれの若手。詩人としての評価も高く、本作の自意識的な主人公の語りでも、その独特のリズムを存分に味わえる。「同時に複数の未来に自分を投影してみようと思う」と冒頭で宣言するこの語り手を通じて、私たちはいくつもの、現実とは「ほんの少し違う」世界を目撃する。図版多数収録。
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