民俗学者・柳田國男が『石神問答』に「唯此の神の古きことのみは疑いなし」と記し、伊勢、三河、遠江、駿河、信濃から関東にかけて広くその痕跡を残す、謎の「天白」信仰。その「天白」を語る際に、必ず参照されていた資料の一つが山田宗睦の「天白紀行」だが、新聞連載記事のため容易に全文を読むことは難しかった。この連載記事に著者自身による大幅な補筆修正を加え、『天白紀行 増補改訂版』(人間社文庫)として初の書籍化。「道の思想史」などで知られる著者ならではの幅広い知識や深い思索が織りこまれたやさしい語り口からは、消え去ろうとしている「天白」への愛惜の思いがあふれる。上質な紀行文として読むことのできる一冊。
レビュー(0件)