地方圏の人口減少、高齢化が急角度で進んでいる。特に地方の中小都市では若者人口の流出が著しい。そのような中で、必死の工業化を推進してきたのが岩手県北上市である。地方圏の中小都市の中ではほとんど唯一、人口を維持し、産業活動も活発なことで注目されている。
この地域は、藩政時代は南部藩と伊達藩の境界に位置し、産業発展の契機をつかむことができなかった。1954年の町村合併によって市としてスタートするが、数年は財政再建団体として苦難が続いた。だがその間も人びとは懸命に「工業立市」に向けた努力を重ねた。巨大工業団地の開発、語り草になるほどの果敢な企業誘致を重ね、ついに北東北一の産業集積を形成することに成功。現在、工業団地は10カ所、約690ヘクタールにも及び、進出企業は270社以上を数える。優れた地元中小企業も育ち、工業集積の厚みも増している。
ただし、近年、同市を取り巻く状況も大きく変わってきた。看板の半導体産業は世界的な再編の中で構造転換を迫られている。次の時代を期待され、集積が始まった自動車産業は、取り組みが思うようには進んでいない。他方で、交通条件の改善もあって北上の拠点性が注目され、物流関係企業の集積が進んでいる。また、発展する市街地と、人口減少・高齢化の進む郊外の中山間地域との市内格差という問題も生じている。
他に類を見ない発展を遂げてきた北上市の次の課題は、工業集積の内面の高度化を果たし、内発的な展開力をつけることである。さらに、北東北の工業ネットワークの形成、地元の人びとの暮らしを豊かにしていくための地域産業社会の形成も必須であろう。その意味で、北上は「地域創生」時代の先駆モデルでもあり、私たちはその成果だけでなく課題からも学ぶことができるだろう。(せき・みつひろ)
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