●「精神分析とは何か?」に始まり,その理論の基礎,歴史,世界各地での展開,批判,研究方法としての精神分析,面接以外への応用,他の精神療法との関係,職業としての精神分析と,初学者の疑問に答え,好奇心を刺激するだけでなく,経験豊かな治癒者にも生きた知識を与えてくれる魅力的な入門書。
●「対象関係論」が精神分析の臨床に関心を抱くわが国の臨床家たちに注目され,実践に役立つ理論や技法として歓迎され始めてからしばらくの歳月が経ちました。そして今日,精神分析のメインストリームと位置づけられるほどになっています。それは,私たちが臨床現場で重いパーソナリティ障害の人たち,あるいは別の形での重篤な病理や行為の障害を抱える人たちに頻繁に出会うことと無関係ではないように思われます。こころの治療者であるなら,それらの人たちをより深く理解し有効に援助する理論や技法を求めないではおれないでしょう。その切なる希求に対象関係論が応えているところに,要望される理由があると思います。本書は実働している今日の英国学派の精神分析を紹介する著書です。英国において,精神分析は現在どのようにあるのかを述べています。精神分析とは何かに始まり,精神分析の理論や歴史,広がりはもちろんですが,批判,研究,他分野との交流,その専門職としての実際まで,実に率直に述べられています。私が本書から得る印象は,記載が誇大感や被害感に染められることのない,公平さと謙虚さです。本書は,英国の精神分析がありのままに理解されることを求めています。本書の構成と内容のわかりやすさもそこからきています。対象関係論のみならず,精神分析に関心を抱かれている方なら,本書によって得られる知識は必ず有用でしょう。精神分析の理論や技法,実践にかかわる人や組織という,日常臨床の営みとしての精神分析の本体がここに描かれています。初学者にも経験豊かな治療者にも,精神分析を知るという私たちが熱望していることに,これまでになかった生きた知識を付け加えてくれるでしょう。(「監訳者まえがき」より)
●目次
監訳者まえがき
序文
謝辞
第1章 精神分析とは何か?
1.誰が患者になるのか? 2.精神分析とは何か? 3.精神分析の過程
第2章 精神分析理論の基礎
1.「内的世界」についての精神分析的視点
1)フロイトの心のモデル 2)症状形成 3)心的防衛機制 4)失錯行為と冗談 5)夢を見ること 6)幻想 7)心的表象と内的対象
2.発達に関する精神分析的視点
1)喪の仕事の中心性 2)フロイトの発達理論 3)発達ライン:アンナ・フロイト 4)幻想と現実との争い:メラニー・クライン 5)発達促進環境:ドナルド・ウィニコット 6)理論の多様性を理解する
第3章 精神分析の簡潔な歴史
1.「脳」から「心」へのフロイトの変化 2.精神分析の誕生 3.誘惑仮説 4.子ども時代の性 5.夢と自己分析 6.初期の仲間たち 7.意見の衝突と相違 8.フロイトの見解の発展 9.歴史に残る主要な分析家たち
第4章 世界各地における精神分析
1.熱狂的な受け入れ:アメリカ合衆国の精神分析 2.回避された分裂:英国の精神分析 3.個人主義と権威主義:フランスの精神分析 4.抑圧とその後:全体主義体制下の精神分析
第5章 精神分析に対する批判
1.精神分析の主張する心理や知識に対する批判:ポパー,チオッフィ,グリュンバウムその他 2.フロイトの業績と独創性に疑義を呈した批評家たちーいわゆる「文脈主義者たち」:ローゼン,エレンバーガー,サロウェイ 3.精神分析に対する政治的イデオロギー的批判:ミレット,ティンパナロ,サース,ライクロフト
4.患者からの批判:サザーランド,サンズその他 5.あらゆる面に対する批判:ウェブスター,クルーズ,マッソンその他
第6章 精神分析と研究
1.臨床研究としての精神分析 2.概念に関する研究 3.臨床場面以外における精神分析概念の評価 4.学際的な接近 5.治療帰結に関する研究
第7章 面接室外での精神分析
1.精神分析的コンサルテーション 2.学問における精神分析
第8章 精神分析と精神(心理)療法
1.談話療法の多様性 2.精神分析的精神(心理)療法 3.分析心理学(ユング派精神分析) 4.精神分析以外の精神(心理)療法の比較
第9章 精神分析家という専門職
1.中心となる機構 2.専門職の発展 3.今日の専門職 4.精神分析とより広い世界 5.役に立つ住所
参考文献/訳者あとがき/人名索引/事項索引
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