本書は、「場所づくり」あるいは「場所の構築」に関する事例研究を提示し、併せてそれに関わるいくつかの地理思想についての考察を試みた研究書である。事例はすべて、筆者がここ15年ほど手がけてきたアメリカ西海岸における都市ないし都市内の特定の地区であり、いずれも何らかの意味でエスニシティと関わりをもつ「エスニックな場所」でもある。本書は、序章と終章を含んで、7つの章から成る。序章では、「場所」と「場所づくり」についていくつか概念的な検討を行った後、「場所づくり」あるいは「場所の構築」の視点を色濃くもった英語圏の7つの研究事例を簡潔に紹介する。本論の5つの章は、それぞれサンノゼ日本町、ロサンゼルス・リトルトーキョー、ワシントン州レブンワース、カリフォルニア州ソルバング、そしてシアトル・パイオニアスクエア地区を対象とし、そこにおける「場所づくり」過程を論じたものである。終章では、これら筆者の研究事例および序章で取り上げた英語圏研究事例を材料としつつ、そこから浮かび上がってくる思想、理念、理想、概念装置など(便宜的に「地理思想」と総称する)をできるだけ理論的に検討しその性質を検討するとともに、その思想に照らして各事例で見られた現象の意味を考察した。取り上げた「地理思想」は、「エスニシティ」、「オーセンティシティ(真正性)」、「都市歴史保存」、「ストレスーシンボル化」であり、それらの考察を踏まえて「場所」と「場所づくり」の本質を再考し、結びとした。
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