本書は、地球科学の視点から、多くの人々に立山連峰の成り立ちと魅力を伝えようという試みである。自然科学研究者である著者は、立山・黒部と富山平野は知的好奇心を強く引きつけられる事柄に溢れている大地である、という。縄文海進の最大期からやや後退して海水準が2.5mほどであった時期の小竹貝塚(富山市)は、上端の標高が1mほどしかなく、当時の海水準より1.5mほども低いという、小竹貝塚の標高の謎。縄文海進の時期に形成された大境洞窟(氷見市)の床面の標高が5mほどもあり、当時の海水準と考えられている約3mより2mほど高いという、大境洞窟の標高の謎。小矢部市田川の浅海性の化石産出層の隆起をモデル計算すると290mほどになるが、実際の標高は60mほどであるという謎。万葉集には立山連峰の剛毅な姿を詠んだ大伴家持の叙景歌があるが、万葉の故地を句にした芭蕉は立山には無関心であったし、斎藤茂吉も立山の歌にはあまり関心を寄せてはいない。それは、なぜか。これらの謎を解くことは、地球科学から考古学と古代史などに架橋する試みでもある。また、地震学・測地学・地球化学など、地球物理的な観測・研究成果を総合して、立山・黒部マグマ溜まりの存在や、10万年に数百メートルの高速で隆起してきた立山・黒部地域の隆起を復元する。東北地震以降に日本列島で生じた地震を各種データから検討。はからずも、東北地震以降の立山・黒部の誘発群発地震は、隆起復元像の傍証となった。
はじめに
第1部 列島史
第1章 古生代 5.41億年前から2.52億年前
第2章 中生代 2.5億年前から6600万年前
第3章 新生代第三紀 6600万年前から258万年前
第2部 第四紀
第4章 第四紀更新世前期から中期
第5章 第四紀後半 大阪層群の時代
第6章 第四紀後半 富山平野
第3部 新人の登場
第7章 12万年前頃の間氷期から最終氷期
第8章 縄文時代 1万6000年前頃から3000年前頃
第9章 縄文時代 富山平野の地殻変動
第10章 弥生時代 3000年前頃から1760年前頃
第4部 歴史時代
第11章 古墳時代 240年頃から592年
第12章 飛鳥時代 592年から710年
第13章 奈良時代(710年から794年)と大伴家持
第5部 地球科学の登場
第14章 同時代のダイナミクスの基本的枠組み
第15章 東北地震前の地震活動と火山活動
第16章 立山・黒部マグマ溜まりと立山・黒部隆起
第6部 2011年東北地震以降
第17章 最初の3.5時間に誘発された余震現象
第18章 日遅れ・月遅れの誘発群発地震
第19章 飛騨山脈で続発する群発地震
第20章 東北地震後の地震・火山活動
第21章 立山・黒部の現在
あとがき
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