古来より人間の徳には、自然を超えたものが三つあるとされてきた。
信と、愛と、希望と。
これらをおこなうことは、自然の法則を踏み越えることを意味する。
なぜならそれは「……であるがゆえに」という因果の法則にもとづいて
おこなわれるのではなく、「……それにもかかわらず」という背理に
もとづいておこなわれるからである。
過去のいつの時代にも、人間は絶望すべき理由を十分に持っていた。
人間の歴史は、血と涙の痕跡にほかならない。
「それにもかかわらず……」人間は信じることを止めず、
愛することを止めず、希望することを止めない。
それはどうしてか。
納得がゆくように説明することは、だれにもできない。
それはただ、人間によって実践される。
もしも、来週のうちに世界が滅びてしまうと知ったら、
われわれはどうするだろう。
その問いに、今日、依然として答えられない。
それゆえ、いまなお「旅」を続けている。
本書は文学・歴史・美術をめぐり省察する旅行記である。
(1章)人参の種を蒔く[伊]
(2章)すべて険しい道ばかり ひと握りの土[英]
(3章)南欧巡礼の道 サンチャゴ・デ・コンポステーラのほうへ[西]
(4章)アシジからの手紙 聖フランチェスコの庵[伊]
(5章)矛盾のなかを行く 有島武郎「二つの道」[日]
(6章)ソールズベリ大聖堂の青い窓 雄鶏とペテロ[英]
(7章)祭司エテロの娘 ラスキンとプルースト[英]
(8章)光の記憶を探して セガンティーニとアルプス[伊]
(9章)静寂 谷間の道を行く[スコットランド]
(10 章)アイオナ島からの手紙 聖コロンバの旅[スコットランド]
(11 章)記憶の入江にて マクタガートの絵[英]
(12 章)スカイ島への旅 ターナーの絵を探して[スコットランド]
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