今や「うつ病」は,すり減った貨幣のごとく,ありきたりのものとして世間に流通し,それが医療の現場に還流され,臨床概念を侵食してきているーー軽症化と操作的診断により,安易な了解を拒む「病」を補足する臨床知は散逸し,患者の鬱滞した苦悩は「罪悪感」から「空虚感」へと出口を失いつつある。
気分障害をめぐる精神医学の静かな危機のなかで,主体の成立に刻印された空虚を追跡し,その核心構図を再度豊かな言葉で描き出す精神病理学論集。
I うつ病の臨床ーさりげない営みの舞台裏
第1章 うつ病の臨床診断について
第2章 バイプロダクトとしての精神療法
第3章 精神病理からみたうつ病の治療構造論ーことさらに精神療法をしないために
2 マニーの精神病理ー生のはずみ
第4章 マニーの精神病理ー生命論的考察
第5章 ヒポマニーの精神病理ー四つのスペクトラムによる変奏
第6章 双極性障害と創造性
3 「うつ」の精神病理ーハード・コアへの三つの旅
第7章 存在の耐えがたき空虚ーポスト・メランコリー型の精神病理
第8章 「うつ」の構造変動ー超越論的審級の衰弱とメタサイコロジー
第9章 楕円幻想ーうつ病のナルシシズム試論
4 うつ病と現在性ー「第三者の審級」なき主体化の行方
内海健×大澤真幸
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