メディアは作家に何をもたらし、作家はメディアといかに切り結んだのか。関東大震災前後からアメリカ軍による占領期までのおよそ三〇年間、激変する社会の状況と真摯に向き合い、創作活動を続けた文学者横光利一。近代メディアの隆盛とともに、「文学の神様」にまで昇り詰めた作家の軌跡とその苦悩を時代のなかに描き出す。
はじめに
第1部 習作期から新感覚派時代へ
第一章 「文学の洗礼を与へた」書物たちーー鏡としての翻訳文学
第一節 ドストエフスキー論の翻訳の試みーー習作期における表現の模索
第二節 典拠の志向性ーー文壇登場の大正時代後期を中心に
第2部 前衛の旗手として
第二章 「文壇といふ市場」へーー『文藝春秋』『文藝時代』『改造』との関連を中心に
第一節 被災した作家の表現とメディアーー関東大震災による感覚の変容
第二節 市場化する文学出版ーー交錯する『文藝時代』と『文藝春秋』のゆくえ
第三節 「円本」時代の到来と作家の新たな展開ーー改造社の発展とともに
第三章 「新しい感性の羅列」--交流する文学と映画
第一節 文学と映画の遭遇ーー「新感覚派」の再発見
第二節 映画製作を通じて見出される創作の方法ーー新感覚派映画聯盟と「狂つた一頁」
第三節 前衛の文学と映画ーー「機械」の映画性
第3部 文学の〈神様〉の誕生
第四章 「共同製作」の場ーー本文とメディアをめぐる探究
第一節 植民地を描いた小説と二つの検閲ーー『上海』をめぐる言論統制と創作の葛藤
第二節 編集される本文ーー「時間」の直筆原稿からの照明
第三節 分裂した本文の軌跡ーー「純粋小説について」から「純粋小説論」へ
第五章 「国語への服従」--拡大するメディアと読者層
第一節 作家にとって「国語」とは何かーー「国語との不逞極る血戦時代」から「服従時代」へ
第二節 メディアがつくる「文学の神様」--文藝復興期の前後を中心に
第三節 「文学の神様」の歐洲紀行ーー外遊とその報道をめぐって
第4部 検閲下の葛藤と再生への模索
第六章 「明日の小説」のためにーー占領期の表現と言論統制
第一節 交錯するメディア検閲ーー編集者の日記に記録された『旅愁』出版の舞台裏
第二節 書き換えられた『旅愁』の本文ーープランゲ文庫所蔵の校正刷の考察
第三節 引き裂かれた「微笑」--事後検閲における編集者の自己検閲
第四節 占領期日本で出版された書物に見る検閲の痕跡ーープランゲ文庫所蔵資料からの照明
おわりに
あとがき
初出一覧
図版一覧
横光利一とメディアをめぐる略年表
英文目次
英文要旨
索 引
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