近年の会計学は、その歴史上、大きな変革期を迎えているように思われる。とくに国際財務報告基準(IFRS)による影響は大きい。しかし、その変革期の中でも、製品原価計算研究の領域における進展の速度は牛歩のごとくであると言える。活動基準原価計算(ABC)の登場によって一時的に製品原価計算研究が活性化したのも20年近く前のことであった。
原価計算は、現代の経済社会で組織を適切に運営していくためには不可欠なシステムである。それは、原価計算システムが組織内部の経済活動を写像し、組織構成員が進むべき道筋を決定するのに役立つ増分原価情報を提供するからである。しかしながら、原価計算自体の重要性は研究者間・実務者間を問わず広く認識されているものの、しばしば原価計算における平均化の側面に焦点が当たり、批判の矛先が向けられている。原価計算の本質を適切に理解するためには重要な課題が未解決のまま残されてきたように思われる。
これまで、原価計算における個別の技法について考察する研究は見られたが、個々のプロセスと原価計算システム全体とを関連付けて体系化した研究は数少ないように思われる。その意味でも、とくにNoreen(1991)他によるanalytical approachの研究潮流に基づいて、製品原価計算システムの構築に関する基礎理論を究明する必要があった。そこで、製品原価計算論の生成から現在に至るまでの発展を回顧し、どのようにして因果関係が追究され、どのようにして意思決定に資する増分原価概念が洗練化されるべきかという点に基本的課題を据えた。
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