●精神分析的精神療法をフルタイムの仕事として行っていく生活は,情緒的にも心理的にも大変なものであるーー。精神療法家とはどんな仕事なのかから出発し,そこで出会う困難,その克服,喜び,そして引退まで,楽しみながら生き残るための骨太な臨床実践を明快なエッセイ調で記す。
●【解説】
本書は “How to”本であるが,それだけにはとどまらない深い含蓄がある。Coltart は,自らの経験を元に「若い」(といっても年齢的に若いということではなく,まだ専門家としての経験が若い)精神療法家や精神療法家を目指す人に,精神療法家になることがいかに苦しく,同時にいかに楽しいかを綴っていく。著者の思考は,精神療法家という職業は一体どういう仕事なのかというところから出発し,何故自分がその職業を選択することになったのか,その中でどんな困難に出会い,それを克服し,また喜びも見出し,今やそれからリタイやしていこうとしているのだが,自分が何を目指していたのかへと広がっている。語られることには自伝的なものが多く含まれており,また長年にわたって精神分析家, 精神療法家として活躍してきた著者の本音,生の感想を聞くことができる。
●目次
監訳者まえがき/謝辞
はじめに
第1章 楽しみながら生き残る
精神療法家の苦難/トレーニングを生き残る/経済・時間・家庭の苦難/使命感/大量の文献を生き残る/トレーニングや教育精神療法からの別離
第2章 精神分析VS精神療法?
精神分析と精神分析的精神療法の違い/精神分析の黎明期/精神分析的な治療の共通点/再び,精神分析と精神分析的精神療法の違い/教育分析,教育精神療法/理論と臨床の現実/ビオンの「記憶なく,欲望なく」/臨床での直感
第3章 うわべはささいなこと
臨床実践におけるささいなこと/患者? クライアント?/患者の見つけ方/面接室の一見ささいなこと/治療者のふるまい/料金の受け渡し/診察室での喫煙/名前の呼び方/外部からの妨害とその影響/患者からの贈り物
第4章 パラドックス
パラドックスを知ること/初心者のパラドックス/パラドキシカルな倫理/解釈のパラドックス/治療者であることのパラドックス/自殺というパラドックス/ある自殺した症例
第5章 アセスメントの喜び
精神療法をすすめない時に/普通の紹介者たち/アセスメントの新鮮さ/予約でのアンビバレンス/適応と適応外/医学的知識が役に立つ時/心気症とヒステリー/アセスメントの自信
第6章 アセスメントの技巧
アセスメントの技巧/患者を紹介すること/心理的資質/アセスメントを始める際に/アセスメントですること/アセスメントで何を知るのか/アセスメント診断とそのあと
第7章 事実は小説よりも・・・
精神科開業医時代の驚き/ある奇妙な患者との長いつきあい/ある年老いた患者/臨床の面白味
第8章 余暇と生活
座りっぱなしの仕事/旅/講演旅行/家族/一人でいること/精神療法協会のメンバーでいること/信じること/宗教と精神分析/仏教と私/精神療法家としてのあり方
参考文献/解題/索引
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