「君に届かない」に続く緒真坂の新作。中編1つ、短編2つを収録。2020年、巷ではテイラー・スウィフトが流れている。が、テイラーが生まれてもいなかった1970年代後半。あのころは、ピーター・フランプトンやボストン、エレクトリック・ライト・オーケストラが流れていた。高校のクラスメイトは、ヘルメットをかぶり、マスクをして校門でビラを配っていた。私は透明人間のように生息し、詩を書いて投稿し、インベーダーゲームをしていた。当時、高校生だった私が回想する「テイラー・スウィフトはいなかった」テクノ・ミュージックが盛り上がった1996年。クラバーだった女子高校生が語る、新鮮で楽しかった日々。父親が倒れるまでは。レコード店アルバイト兼DJの彼氏、クラブ友だちのこと。音楽と仲間と愛と家族。いちばん大事なものとは、いったい何だったのだろう。「ジェフ・ミルズがいた」かつてDJだった男は、いま、SEをやっている。40代になり、髪の毛が薄くなり、太っている。生きる意味を見失い、この世を地獄としか思えない。わがままな生き方を貫いてきた男の現在の心境を語る。「野中リユ」1970年代後半、1996年、そして2020年。個人的な音楽史を描いた小説集。
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