本書は、人間社会の格差の構造について、人の移動と定着の地理学の視点から解明することをめざす試論である。ただし、国籍や宗教のように、明白な基準で区別される人々の関係に注目するのではない。本書が投げかけるのは、一つの国の内側でも、言語や文化を異にする人々が集まる都市産業地域には、複合社会に特徴的な格差の構造が存在するのだろうか、という問いである。そこでは、生活戦略を立てようとするニューカマーが遭遇するホスト社会との隔たり、つまり、やや木目の細やかな日常性の相違というべきものが問題になる。スペイン各地の言語や文化を背負って移動する人々に光を当てながら、地域間に存在する格差が人口移動を媒介としてホスト社会の中に織り込まれ、新たな格差の構造となって立ち現れるプロセスを解き明かすこと、それが本書の中核をなす目標である。
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