義務教育が子どもの義務でないのと同じように、PTAへの参加も保護者の義務ではありません。PTAの問題がメディアでも取り上げられるようになり、PTAへの加入が任意であることは、広く世間に知られるようになりましたが、今もなお、加入率は高止まりしています。そのような状況で、自分一人だけがPTAに加入しなかったら、周囲からどう見られるかわからない、という恐怖心があります。PTAは、そんな保護者の恐怖心に支えられた組織です。本書は、そこに無謀にも首をつっこんだ鴨葱男の2年間にわたるPTA体験記です。 昨今、賛否両論のPTAですが、本書の内容をひと言でいうと「PTA批判」です。しかし、何の根拠もなく、ただ批判しているわけではありません。自分の息子が所属する小学校のPTA会長を2年間務めた経験をふまえたうえでの批判です。そこで見聞きした現実は、正直に言って、想像を絶するものでした。それは、言葉にして吐き出さなければ、到底、自分一人では抱えこむことのできないものでした。PTAに関わった多くの保護者が、このような経験をそれぞれの胸にしまい、日々生活しているのかと思うと暗澹としてきます。そうしたPTAの現状を白日の下にさらし、PTAに苦しむ人を一人でも減らしたい、そして自分も楽になりたい、というのが執筆の動機です。 PTA活動は保護者の義務ではないにもかかわらず、「PTAから逃れることは許さない」という目に見えない圧力があるため、実質的には、今も変わらず、PTA活動は保護者の義務のままです。いくら「PTAは任意加入だ」と主張してみても、個人が自由に入退会できないのであれば意味がありません。「PTAは保護者の義務である」という周囲からの同調圧力が、保護者の自由意思や行動を制限しているところに大きな問題があります。この同調圧力の背景には、今日の学校教育を是とする価値観があります。社会全体がこの価値観にとらわれた結果、多くの保護者がPTAに苦しむ状況が生まれています。 PTAは保護者だけでなく、子どもも苦しめています。PTAは「子どものため」の組織とよくいわれますが、実際には、学校や地域の大人同士のしがらみにとらわれた、「大人のため」の組織であるといえます。その子どもたちを、保護者たちは人質として学校にとられているため、学校にもPTAにも逆らうことができません。PTAはそのことを利用して、保護者を活動に参加させているのです。こうした状況は、PTAから保護者への「ハラスメント」であるといえます。 学校内では、そうした大小さまざまのハラスメントが野放しになっています。そして、そのハラスメントは、学校という枠を越えて、外の社会にも「染み出して」きています。そこでもやはり、犠牲になるのは、弱い立場にある子どもたちです。 PTAの問題を掘り下げていくと、さまざまな社会問題がみえてきます。本書では、そうした社会問題にまで視野を広げていき、最終的に環境問題にたどり着きます。その先にみえた希望の光は、なんと、子どもの力でした。
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