* * * * * 本書の解説 * * * * *
本書では,原則として,世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)に依拠したパーソナリティ障害の下位分類を用いた。日常診療でICD-10による臨床診断が求められるからである。特定のパーソナリティ障害(F60)には,妄想性パーソナリティ障害(F60.0)から依存性パーソナリティ障害(F60.7)までが区別される。認知療法は,Beckらの著書にあるように,どのパーソナリティ障害にも適用可能である。しかし,本書には情緒不安定性パーソナリティ障害(F60.3)以降を取り上げた。
各論の最初を飾るのは情緒不安定性パーソナリティ障害である。第4章は外来での治療の粋が提示され,第5章は入院を含む継続的な関わりが論じられる。第7章には演技性パーソナリティ障害(F60.4)が登場する。ここではマインドフルネスがキーワードである。第8章は強迫性パーソナリティ障害(F60.5)で,摂食障害を伴っている。そして,第9章から第12章までの4ケースは,不安性(回避性)パーソナリティ障害(F60.6)である。不登校・ひきこもり,リストカット,対人恐怖,セックス・レスといった病歴がみられる。最後は第13章のパニック障害を伴う依存性パーソナリティ障害で締め括られる。
●うつ病の精神療法として出発した認知療法を,臨床現場で近年増加しつつあるパーソナリティ障害に適用したケース集。とりあげられたケースは,情緒不安定性パーソナリティ障害から依存性パーソナリティ障害まで幅広い。まだ着手されて間もない,だが認知療法の根幹を問う野心的な試みから,臨床家の読者が得るものはきわめて大きい。
●目次
プロローグ 「標準的」認知療法
第1部 総論
第1章 理論
第2章 臨床
第3章 鑑別治療学
第2部 各論
第4章 情緒不安定性パーソナリティ障害で認知行動療法が有効であった一症例
第5章 「認知療法は苦手です」と標準的認知行動療法に躊躇を示した情緒不安定性パーソナリティ障害患者の入院心理療法
第6章 認知療法中止例に学ぶ情緒不安定性パーソナリティ障害における精神療法的介入の工夫
第7章 演技性パーソナリティ障害への弁証法的行動療法
第8章 神経性無食欲症を合併した強迫性パーソナリティ障害に対する認知行動療法
第9章 不登校からひきこもりを呈した青年期事例における不安性(回避性)パーソナリティ障害への介入
第10章 不安性(回避性)パーソナリティ障害の認知療法ーー自責と拒絶の怖れを訴える女性への,認知的概念化と介入
第11章 不安性(回避性)パーソナリティ障害を伴った重症対人恐怖症に対する認知療法
第12章 セックス・セラピーを求めてきた夫が不安性(回避性)パーソナリティ障害の一症例
第13章 パニック障害をともなった依存性パーソナリティ障害に対する認知行動療法的介入
エピローグ 認知療法の新しい地平
あとがき/索引
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