●精神分析的治療はいかにして変化をもたらすか
●サイコセラピーにおいて患者に変化をもたらすものは何か。精神分析家ダニエル・スターンをはじめ発達学者や児童精神科医からなるボストン変化プロセス研究会は,乳児研究やシステム理論の諸概念を手がかりに探究を重ね,「解釈を越えた何か」として,治療者と患者の間主観的な出会いのモーメントの重要性を見出す。
●精神分析的治療において変化をもたらすには,解釈を“越えた何か”が必要であるという点に関しては,もう長いこと意見は一致している。抑圧された衝動やファンタジーを意識化するという意味での解釈だけでは十分ではないかもしれない,という訳である。であるとすれば,精神分析的な治療はいかにして変化をもたらすのか? ボストン変化プロセス研究会(BCPSG)は,1995年の始めにグループを結成。変化を触媒する治療的出会いにおいて必要とされる,解釈を“越えた何か”をめぐる綿密な議論のための言語や基本概念をいかに展開したらいいか,検討を始めた。……われわれが注目した所見は,ほとんどの患者が,治療者との人間同士の真摯な繋がりという“特別なモーメント”を思い出すことであった。治療者との関係が変容し,その結果,患者の自己感が変化したモーメントである。こうした間主観的な出会いのモーメントが,変化プロセスにおける重大な部分を成しているとわれわれは考える。加えて,治療的変化におけるそうしたモーメントの役割は,最近の乳児研究と現代システム理論から引き出される概念との関連で理解するのが最善であると考えるようになった。(「第2章」より)
●目次
謝辞
序文
本書の成り立ちと構成:BCPSGのそもそもの始まり
第1章 精神分析的治療における非解釈的メカニズム:解釈を“越えた何か”
第2章 関係性をめぐる暗黙の知:精神療法的変化における中心的概念
第3章への導入
第3章 “私が分かったとあなたが分かったと私が分かる……”:Sanderの認知プロセスと精神療法場面における関係的な
動き
第4章への導入
第4章 暗黙のものを解明する:分析状況における変化のマイクロプロセスとローカルレベル
第5章への導入
第5章 「解釈を“越えた何か”」再考:精神分析的出会いにおけるスロッピーネスと共創造性
第6章への導入
第6章 精神力動的意味の根源的レベル:葛藤,防衛,そして力動的無意識との関係における暗黙のプロセス
第7章への導入
第7章 関係的な意味のさまざまな形:暗黙の領域と自省的・言語的領域との間の関係をめぐる課題
第8章 “関係性をめぐる暗黙のプロセス”に基づいて治療作用を考える
参考文献
訳者あとがき
人名索引
事項索引
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