1887年、横浜・ヴァンクーヴァー間の太平洋航路開設と相前後して、日本人のカナダへの渡航・移住の歴史は始まる。以来、数千人の人々が新天地を求めて渡加し、「日系カナダ移民」という生き方を選択した。その出身都道府県別人口比の一位は、滋賀県出身者が占めていた。二つの世界大戦を経験する動乱の世紀、異なる文化・社会環境をもつ若い国で、彼らはどのようにして生活の礎を築き、アイデンティティを確立していったのか。労働者として、義勇兵として、事業家として、敵性外国人捕虜としてーそれぞれの置かれた立場、時代局面のなかで、個々の強い意志と環境への適応力、「日系」の連帯をもって奮闘した人々。そこには滋賀県が生み出した「近江商人」のビジネス手法と精神性が看取される。本書は、一次資料の丹念な掘り起こしと緻密な分析を通して、太平洋の彼方で展開されていた知られざる社会経済史に光をあてる。
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