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辺土(へんど)とは、遍路で生活する者である。 時に放浪者として迫害される彼らに密着取材! 誰も書けなかった「日本最後の聖と賤」たるもう一つの遍路を、5年をかけて描いた唯一無二のルポ! 【辺土(へんど)とは】 草遍路、乞食遍路、プロ遍路、職業遍路、生涯遍路とも呼ばれる。 長い歴史の中、「へんど」はやがて乞食を意味するようになるが、昭和三〇年代までは遍路といえば「へんど」だった。 一方で、八八ヵ所を経文を唱えて回る遍路は、ときに畏敬と畏怖の目で見られた。彼らは聖と賎を同時にそなえる存在だったのだ。 現代の草遍路を探し、共に托鉢修行も著者は行うだけでなく、福田村事件(関東大震災で起きた日本人による日本人虐殺)をはじめ、 路地の歴史もたどりながら5年をかけて遍路を続けた。 最後の聖域の本質を大宅賞作家が抉り出す、類書なき紀行ルポ! 「帰るところもなくなった生活を賭けて、托鉢と接待、野宿だけで何年も何周も巡礼することによって、その人は確実に浄化され昇華されていく。本質的な何かを取り戻すか、もしくは欠けていた何かを得ることができるようになる。 四国遍路で人は変わることも、再生することもできるのだ。私はこの目で、確かにその一例を目撃した」(本文より) 【目次】 第一章 辺土紀行 徳島ーー高知 第二章 幸月事件 第三章 辺土紀行 高知ーー愛媛 第四章 托鉢修行 第五章 辺土紀行 松山ーー香川 第六章 草遍路たち おわりに 参考文献一覧 第一章 辺土紀行 徳島ーー高知 呪われた出立/遍路とへんど/板野町の路地/行方不明/通夜堂/鮎喰川の路地/本来の遍路/素潜り漁をする老人/元極道の遍路/路地の人々/善根宿の酒乱/遍路と路地/遍路を世話した路地/ハンセン病者の遍路/キリシタンと路地 第二章 幸月事件 死んだとて泣く人もなし草遍路/草遍路の死/幸月との出会い/草遍路を世話した人/逮捕/接待する人/草遍路の生い立ち/「安定した生活を手に入れると、きまってそれを壊してしまいたくなる」/全国放送/裁判/遍路と贖罪/激高/判決/入獄/刺した手です祈る手です/出所それから 第三章 辺土紀行 高知ーー愛媛 闇金融王/出自は脚色だった/融和の人/女遍路/ラッキョウの路地/お祓いの川/唐言/コクビの土地蔵/警吏のなりわい/強盗亀/おとし宿/宇和島の高級善根宿/八幡浜/漢字にフリガナをつけるところから始めた/マリア観音/猫島 第四章 托鉢修行 第二の幸月/弟子入り志願/托鉢の種類/善根宿には泊まらない/同行二人/托鉢見学/初めての托鉢/途中で中止する/初めての門付/托鉢の現実/パフォーマンス 第五章 辺土紀行 松山ーー香川 石田波郷のこと/遊郭跡と劇場/道後温泉の馬湯/女相撲/八八ヵ寺騒動/結願/福田村事件/事件の再発見/生存者の話1/生存者の話2/事件現場の反応/被害にあった路地/泥色の川 第六章 草遍路たち ケンちゃん事件/我聞/歩き遍路一〇〇回のカラクリ/草遍路のナベさん/毎日巡礼ヒロユキの場合/ホームレス詩人/「野宿はつらいけど、自由だし仲間もいた」/遍路の本質/浄化 おわりに 参考文献一覧
レビュー(10件)
私は昭和30年代に四国で生まれました。お遍路さんの姿は日常風景で、別に畏敬の眼で見ることもなければ、蔑む対象でもありませんでした。ただ、そっと見守るだけのことでした。私の地方ではお遍路さんを「お四国さん」と呼んでいたのを覚えています。この本は、ずっと違和感が付きまといました。お遍路さんと同和や貧困を無理やり結びつけて語っています。西日本のどこに行ってもあるように、四国にも同和地区はありますし、そもそも遍路に廻るくらいだから、人に言えない過去を持つ人が多いのは事実だと思います。消化不良の一冊でした。
ちょっと期待していた内容ではなかったです。もう少し、所謂「へんど」についての言及があればよかったのですが、内容には満足できませんでした。
しらなかったのわたしたら
死ぬ前に一度読むべき本の一つに違いありません。風土と人と宗教の関わり合いの凄みを描き出しておられると感じました。お遍路をムードで終わらせてはもったいないです。素晴らしい本に巡り合えましたことに感謝申し上げます。