マネキン会社に勤務していた土井典は暗黒舞踏の土方巽の代表作「肉体の叛乱」の模造男根を制作し、土方に背中を押され人形作品を発表するようになった。
1974年の初個展「エロティックな函」では澁澤龍彦が推薦文を寄せ、種村季弘、土方巽、寺山修司、日向あき子らに注目され、人形界で特異な位置に身を置いた土井典。
土井は2016年に他界したが、生前の著作は2冊の『葡萄色の乳房』『偽少女』の作品集しか残っていない。
本書ではその生涯を追いながら、現代における真価を芸術・ジェンダー批評の榊山裕子が再検証する。
・口絵カラー16ページ 本文モノクロページ
・本書はオンデマンド印刷によるペーパーバックです。限定部数印刷の「特装本」と異なります。
<序章より引用>
【愛玩拒否の人形】
「私の人形の根底には、まず愛玩拒否っていうのがあるんだろうな。小さい頃から人形なんて 好きじゃなかったし」
土井典は、あるインタビューでこのように述べている。土井には人形作家、造形作家、美術家 などさまざまな肩書があったが、現在では主に人形作家として知られている。
しかし土井によれば、子どもの頃は人形で遊んだことがほとんどなかったという。彼女が本格的に人形を作るようになったのは、美大卒業後、マネキン製造会社に勤めてからのことである。 また土井の名を一躍世間に知らしめたのは、人形ではなかった。写真や舞台のために実際に装着する衣裳としての「貞操帯」や「模造男根」であった。 ウーマン・リブ前夜の、女性をまだ縛っていた「貞操」という概念を逆手にとるスキャンダラスな作品に土井は果敢に取り組んでいった。
本書でみていくのは、フェミニスト・アートという言葉もまだなかった頃から、自らの性と身体に向き合ったひとりの人形作家、アーティストとしての土井典の姿である。
序章/土井典とはなにものか 第1章/土井典前夜(1928年~1968年) 第2章/球体関節人形と肥満体人形(1968年~70年代前半1) 第3章/男性にとってのエロスと身体(1968年~70年代前半2) 第4章/女性にとってのエロスとジェンダー(1968年~70年代前半3) 第5章/人形と他者の時代(1973年~1980年代前半) 第6章/人形論と女性論(1983年~1991年) 第7章/「創作人形」と展覧会(1989年~2000年) 第8章/「少女論」の終焉と土井典再評価(2000年~) 終章/新しい評価に向けて
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