紀元前五世紀、十六の大国が争う古代インド。社会の急激な変革は古い神々の教えを揺るがせ、人々の心に虚無がはびころうとしていた。釈迦国の王子ガウタマ・シッダールタは虚無にあらがいながらも生きることの苦しみを悟り、国も身分も家族も捨て、苦からの脱却を目指す。長い修行の果てに“目覚めし者”仏陀となった彼は、全ての衆生の救済を志すー。古今東西の仏教研究・学説を下敷きに、シッダールタ=仏陀の誕生から入滅、それを彩る「虚無の太陽」プーラナら自由思想家、多くの弟子たち、反逆児デーヴァダッタ、釈迦国の滅亡、王舎城の悲劇、殺人鬼アングリマーラなどを新たな解釈で描き出す。
小乗仏教的志向と大乗仏教的志向の萌芽とその対立の中で、仏陀最後の旅を記した経典である大般涅槃経をなぞりながら、そこに隠された仏教分裂に至る原因と思惑を解き明かす最終章は圧巻である。人間仏陀の偉大なる生涯と挫折を描いた長編歴史小説。
第一章 四門出遊(しもんしゅつゆう)/第二章 梵天勧請(ぼんてんかんじょう)/第三章 初転法輪(しょてんぽうりん)/第四章 祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)/第五章 諸行無常(しょぎょうむじょう)/第六章 破邪顕正(はじゃけんしょう)/第七章 涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)/参考文献
レビュー(4件)
こんな素晴らしい小説があるだろうか。 今、光を失いかけたジェータ王子の章を読んでいて思わずこの言葉が出てきました。 初めて読んだときは物語の面白さ、魅力のある登場人物に惹かれて、あらすじを追って一気に読み終えました。もちろんその間に何度もその内容の奥深さに感動し、涙し、ときに痛快な思いもし、胸が苦しくなるほど引き込まれました。 底辺に流れる仏陀の説く慈悲の深い意味も理解できました。 今回二度目になると著者の言葉や文章の美しさへの丁寧な姿勢のようなものが見えて心が震えます。 仏教をよく知らない私でも人としての悩み、考え方、生き方、人生を生きていく上で現代にも通じる教えを学びました。 「人は正しさの中でしか生きられない」この言葉はどんなときにも共通する根本の教えだと思いました。 この複雑な現代を生きていく上での信条としたいと思います。お勧めです。
とても面白い。 時間を忘れて読みふけってしまう。
たいへん長い小説であり読み慣れている人でも一週間から十日はかかる。だが仏陀をはじめ登場人物は魅力的で、当時のインドの思想文化、社会秩序風習などが面白く飽きさせない。 作者は現在の仏教界隈の多数派解釈からはおそらく意図的に逸脱している。梵我一如、無我と非我、輪廻の克服、そしてガウタマ仏陀の「見込み違い」「過ち」。仏教を少々学んだことのある人にはその解釈は刺激的で斬新であり、自らの仏教を見直し深めるものとなるだろう。また仏教をそれほど知らない人にもわかりやすく、仏教、仏陀の魅力を知るにうってつけだろう。 読み物として、仏道に反し悪人として名高いデーヴァダッタの烈しい生き様がもっとも人間らしく共感を覚えさせるのは面白く秀逸だと思った。 またマハーカッサパら出家者と、ヴィマラキールティら在家者の衝突、そこから明らかとなる教団内の不破は、のちの仏教分裂を暗示しているに違いなく興味深い。 読後感は爽やかで、人と語りたくなる。
素晴らしい小説でした。 仏陀の生涯がよくわかりました。 人にも勧めたいです。