平成十四年(2002年)で私は満八十歳を迎える。よく言われるように、地球の歴史に比べると人の一生など物の数ではないが、私自身、振り返ってみると、この八十年の人生は、短いようで長かったという気もしている。今、いろいろなことがよみがえってくる。この八十年間でもっとも強烈な印象として、常に頭から離れなかったことと言えば、ソ連における約二年間の抑留生活である。終戦後、約六十万の日本人がシベリアに抑留されたが、ソ連によるこの理不尽な強制収容の事実は、二十世紀の歴史の中で、語り継がれなければならない、悲劇的とも言える出来事と思っている。 戦後、すでに半世紀を過ぎ、シベリア抑留ということも、世の人の口の端にあまりのぼらなくなってきたが、年寄りの繰り言として書き残しておくことは、無意味ではあるまい。 いや、生き残った者の使命ではないかとさえ思っている。 ここに、極寒のシベリアで強制労働を強いられ、非人道的な仕打ちを受けたときの悔しさ、無念の涙、そして日本人の誇りといったものを少しずつ思い起こしながら、まとめてみました。傘寿の一老人が体験した、若き日の生きざまとして、目を通していただければ幸甚に存じます。 (はしがきより)
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