りりかさんは、てんくまとちびくまが大好きで、どこへだって連れて歩き、朝起きてから夜ねむるときまで、いつも一緒でした。けれども、ぬいぐるみのからだというのは、思っていたほど丈夫なものではありませんでした。かわいがればかわいがるほど、やぶけたり、ほつれたり、よごれたりしてしまうことに、小さいりりかさんは気づいてしまったのです。
そこで、りりかさんは大人になると、洋裁学校に入学して、じゅうぶんな知識と技術を身につけました。そうして、ぬいぐるみを愛する人たちが、いつまでも幸せにくらしていけるように、こわれたぬいぐるみを治療するための「りりかぬいぐるみ診療所」を開いたのです。
場所は、美しい高原の森のなか。いちばん近い町から、一時間ほどバスにゆられたあと、さらにバス停から三十分ほどあるいたところに、りりかぬいぐるみ診療所はありました。古い別荘を改築して作られたその診療所の周りには、しらかばや、ぶなや、くりの木がはえ、天気のいい日には、鳥や、りすや、野うさぎなどが、ひょっこり顔を出すこともありました。
そんな山の中にあるにもかかわらず、どこでうわさをきいたのか、りりかさんのもとへやってくる患者さんは、あとをたちませんでした。りりかぬいぐるみ診療所にぬいぐるみをあずけると、どんなにぼろぼろになったぬいぐるみでも、まるで生まれかわったように、いきいきとしたすがたでもどってくると、もっぱらの評判だったからです。
りりかさんは、ぬいぐるみを直す腕がいいということのほかは、とくにかわったところもない、ごくふつうの女性に見えました。けれどもたった一つだけ、りりかさんには、だれも知らないひみつがあったのです。いったいどんなひみつなのかは……物語を読み進めていくうちに、すぐにわかることでしょう。
さあ、今日もりりかぬいぐるみ診療所に、患者さんがやってきたようです。(本文より)
もくじ
1 空色のルリエル
2 おしゃべりリッキー
3 思い出のかめごろう
4 真夜中のちいさな訪問者
レビュー(4件)
ぬいぐるみが好きな人にピッタリの本
偶然、このシリーズを知り、購入してみました。 出版社の商品ページでお話の導入部分が試し読みできます。 (別のネット書店のサンプルでは、副題にもなっている1つ目のぬいぐるみのお話が途中まで読めました) まず、カバーをめくると、カバーとはまた違う、おしゃれな雰囲気の装丁になっていて、嬉しいです。 小学中級からが対象とのことで、大人の私は読みづらさは感じませんでした。 挿絵は基本的にはモノクロですが、優しい雰囲気に溢れていて、ぬいぐるみたちの絵も可愛らしいです。 タイトル通り、ぬいぐるみの診療所なので、布ばさみやミシンを使う描写もあり、どうやってぬいぐるみたちを元気にしてあげていくかがきちんと描かれていると思いました。 私は、物心つく前からの付き合いのぬいぐるみと抱き人形がいるのと、人形の服作りが趣味でミシンを使うので、ぬいぐるみとのエピソードに共感するところもありましたし、ぬいぐるみに使う布選びまで、とにかく丁寧に書かれていることに好感を持ちました。 それぞれのお話の後半には少しファンタジー要素も出てきますが、終始、優しくて、心が温かくなるお話が収録されています。