●本書はその表題にもあるとおり英国の学校教育におけるナショナル・カリキュラムを,通常学級や特別学級の中でインクルージョンの理念に基づいて,TEACCHプログラムの最も基本的で主要な具体的方策である「視覚的構造化」による教育を実践して,大きな成果を示した2年間の実直な記録である。自閉症の生徒と一般の生徒は,そのままでは教室の「文化」の意味をさまざまな程度に共有できない。メジボフ教授が常々言うことであるが,TEACCHプログラムは,意味のあるコミュニケーションをし合いながら,共生し合っていくものである。さらに自閉症の生徒は「独特の学習スタイル」をもっている。その事実を適切に理解されながら,彼らのさまざまな「権利」や「インクルージョン/機会均等」の原則が考慮されなければならない。それらのことを生徒の全てのカリキュラムに実行するために,「いかに英国の教師たちが構造化による教育の原則を応用しているか」ということに関して,本書は「詳細な実例を提供」しているものでもある。
●目次
監訳者まえがき/まえがき/序文/謝辞
第1章 自閉症スペクトラム概説
自閉症スペクトラム障害とは
要約
第2章 教育プログラムの基礎としての構造化による教育
1.TEACCH部
2.構造化による教育
結論
第3章 ナショナル・カリキュラムーー自閉症スペクトラム障害の生徒が履修する際の問題
序論
1.ASDの生徒の権利
2.ASDの生徒の学習ニーズと学習スタイル
結語
第4章 物理的構造化ーー生徒が教室での活動の意味を理解するために
はじめに
1.教科学習するための物理的構造化とルーティンの使用
結論
第5章 視覚的スケジュールーーこれから何が起こるの?
はじめに
1.カリキュラムへの参加の機会を増やすためにスケジュールを使う
2.実物レベルのトランジション
3.実物提示によるスケジュール
4.写真と絵を用いたスケジュール
5.シンボルを使う
6.書きことばを使って書かれたスケジュール
7.より複雑なスケジュール
結論
第6章 ワークシステムーー組織化する
はじめに
1.組織化するためのワークシステムの活用
2.ワークシステムの紹介
結論
第7章 視覚情報ーー意味をつけ加える
はじめに
見分けるための方略として付加的な視覚情報を用いる
結論
第8章 全体のまとめ
付録A:カリキュラムの組織化 付録B:構造化のまとめ 付録C:自立課題の記録紙
参考文献/索引
* * * 本書の解説 * * *
本書は英国内でTEACCHの構造化による教育を用いて実践している多くの保護者や専門家から,構造化による教育とナショナル・カリキュラムとの関連性について質問されてきた中から多くの示唆を得て編集されました。これらの多くの質問に個別に答えてきた後で,私たちの考えをまとめて,系統立てて提示することができればより効率的で役立つだろうと考えるようになりました。本書はTEACCHに関する入門書でも,構造化による教育方法のマニュアルでもありません。ナショナル・カリキュラムで列挙されている目標や優先課題を進めていく上で,TEACCHの主要な介入方法である構造化による教育をいかに活用することができるかを示そうとした私たちの努力の結果です。(「序文」より)
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