十代の若者に対し、輝かしい夢を持って社会に出て行く自信を持つことの重要さを問いかけ、具体的にその夢を叶えるにはどうすればいいのか、熱く訴えかける自己啓発小説も第四弾となる。残すは、夏休みあたりに発売予定の最終章、第五巻のみとなった。
心を開いたかに見えた阿部健太の自殺に、小山はやり場のない自責と絶望に追い込まれ、教師を辞めなければならないとかと思い詰める。しかし、そうやって逃げ出したのでは何の解決にもならず、かえって信頼をなくしてしまうと己れを叱咤し、初めて受け持った中2の生徒が3年生へと進級するに際し、担当の数学だけでなく、すべての受験科目に関して、どう勉強すべきか指導したいと大見得を切ることで、自分の仕事を増やし、深く子供達に関わっていこうと決心するのだった。その精神的苦悩と、それをいかにして乗り越えていくかという成長の記録が、筆を尽くして描かれることになる。
まずは登校拒否を続けるもう一人の生徒を訪れ、その気持ちを理解すると共に、独学して解らないという部分に、適切な説明をしてやることで、徐々に信頼を勝ち得、復学を促すことが出来た。さらに修学旅行では幕末の歴史を話すと同時に、終戦の一日前、1945年の8月14日にアメリカ軍が岩国を空爆して、何百人もの市民を殺していった非道について語るのだった。
中学が夏休みに入る前、校長から見合いの話を勧められ、高校の教師をしているという女性と対面するが、結婚したい気持にはなれず、校長に断りの電話を入れる。その直後に、独りで住むには大きすぎる家の内覧に出かけた処、一目で気に入って購入を即決したのだった。そんな折、1学期のテストで成績が急降下し、表情も暗く見える佐々木凜花に声をかけ、職員室で話しにくいのなら新しく入居したばかりの家に遊びにおいでと心配するのを、彼女は喜んで足を運ぶようになるが、それを善く思わない近所の目があった・・・。副主人公とも言える佐々木凜花の行く末はどうなるのか、その関係が第五巻のテーマとして、物語を大きく動かしていく。
普通の単行本サイズなら七冊になるところを、一冊一冊の厚みを増やし、全五冊として上梓されるとなれば、その圧倒的な長さに敬遠する向きも多いだろうが、いったん読み始めてみれば、これまで読んだこともないストーリーに引き込まれ、ページをめくるのがもどかしく感じられるに違いない。
題字にはこれまでと同様、弘兼憲史氏の「相談役 島耕作」のタイトル、「宮島藤い屋もみじ饅頭」の看板、森進一のCDジャケット、千宗室氏の茶室に飾られる掛け軸などなど、数多くの作品を手がけられた岩見屋錦舟氏の鮮やかな行書体で、本のカバーと扉の第一ページ目を飾っていただいた。
解説と推薦には、大学時代の数少ない親友であり、小説に描かれる多くの場面で、若き日の著者の思い出が重なるはずだと、無理を言って依頼をした鈴木祐二氏が担当している。これまでの解説と毛色が変わり、内容に関わる話ではなく、著者の人となりを語って、軽やかな語り口になっているのが面白い。
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