生物は非線形性が強く、それを研究する生命科学には、実験しないと分からないことが多い。歴史的にみると、新しい発見や発明が生まれたときには、研究方法の革新があり、その多くには可視化の技術を伴った。分子生物学が細胞の形態や活動状態を可視化することに大きく貢献した。その中には、蛍光物質による微小構造の可視化、ウイルスベクターや遺伝子組み換え動物を用いた光遺伝学などが含まれる。これらの可視化の努力は顕微鏡技術、なかんずく、多くの工夫を凝らし光学顕微鏡の回折限界を乗り越えた、何種類もの超解像顕微鏡の発明や、クライオ電子顕微鏡、電子顕微鏡像の3次元再構築技術などに支えられた。2022年版では1章では軸索輸送のメカニズムを理解するうえで、超解像顕微鏡を開発し、1分子レベルでのライブ・イメージングを実現させる過程が述べられ、3章ではゲノム編集を用いたラベリング技術により、細胞内構造を構成するタンパク質の分布や相互作用の解明を進める過程が述べられる。8章では走査型電子顕微鏡による連続切片の再構成に基づいた細胞内の膜構造解析について、第5章では光遺伝学、カルシウムイメージング、特にGRINレンズを用いた超小型蛍光顕微鏡について解説している。たんぱく質(AMPAサブユニット)への局所光操作による機能解析については2章および4章に詳しい。
はじめに/序章 研究と方法/1超解像顕微鏡技術の開発と軸索輸送研究への応用/2シナプス生理学のtranslational medicine/3生体脳内ゲノム編集による脳組織内1細胞での分子イメージング/4グルタミン酸受容体の光操作と記憶における生理機能の解明/5記憶痕跡細胞による記憶の脳内表現/6哺乳類における概日履歴現象の分子制御機構の探索/7大脳組織形成における神経前駆細胞の形態の役割と核移動の意義/8ニューロンにおける小胞体ーミトコンドリア接触/9精神疾患に伴う大脳回路構造異常の精密解析/10脳構築における層構造形成の力学制御機構/11眼球運動座標系とリスティングの法則の神経機構/12線条体尾部による自動的な行動選択のメカニズム/13行動を準備し適時に実行する大脳皮質メカニズム
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