私が津軽を離れ、札幌市民となったのは昭和40(1965)年である。すでに半世紀を超えているのに未だに故郷が懐かしく、生まれ育った町並みや駆け回った野山を克明に思い浮かべることができる。生まれ故郷が逆に札幌だったなら、今度は札幌が懐かしくてたまらなくなるのであろう。
「故郷忘じ難し」。それは、人間が持っている根源的な感情に違いない。
ある日、私は、そんな大切なはずの故郷に2つの謎を置き忘れたままであることに気付かされた。
その1つは「蒙古(モンコ)の子守唄」である。津軽地方だけに伝わる子守り唄である。
もう1つは、古老から教えてもらった話である。「昔、鎌倉時代の頃、十三湊(とさみなと)を拠点として、日本海を股にかけて国外にも進出していた海の豪族、安藤水軍があった。十三湊は西の博多に匹敵するほど繁栄した港湾都市だった」
というものだった。
しかも、今泉やその周辺の人は皆、安藤水軍の末裔だというのである。その話は、自分の祖先は海賊だったと言われたようで、子ども心にもかなりのインパクトがあった。
ということで、2つの謎解きの旅が始まる。
それをまとめたのが本書であるが、著者は、同書の帯に次の言葉を記した。
鎌倉殿の時代、
日本海を舞台にもう一つの壮大なドラマがあった。
蒙古襲来と安藤水軍!太宰治の先祖は対馬の流民?
時空を超え、今解き明かされる謎の子守唄。
ルーツを探る旅は、何故か心に響いてくる。
二つの忘れもの 〜 旅のはじめに
序章 寝んねば山がら蒙古来るぞ
第一部 幻の水軍 津軽安藤氏の興亡
第一章 奥州の夜明け
第二章 津軽安藤氏の誕生
第三章 陸の覇者・海の支配者
第四章 幻の国際港湾都市
第五章 津軽に残る唐糸御前伝説
第二部 対馬と津軽の縁(えにし)
第一章 太宰治と津島家
第二章 太宰治の苦悩の軌跡
第三章 蒙古襲来(元寇)と対馬の真実
旅のおわりに
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