本書〈日本古典漢字文の総合的考察〉2『神名等の動態』では、日本語(倭語)が漢字假名で書かれているという原則を見失い、誤読し、誤って解釈されてきた日本古典漢字文(漢字テキスト)の表記原理について、幅広く検証し、判明した「地動説的転回」をもたらす【基本線】の2「固有名詞の基本構造」について詳述する。
全文、漢字で記されている『古事記』をはじめ『日本書紀』、『万葉集』、『風土記』などは、和語・和文を表記するために漢字(漢語、漢文措辞を含む)を使った「日本語漢字文」、すなわち「漢字テキスト」である。しかし、現在、漢字テキストは解釈以前の状態にあり、まず表記を解読することから始めなければならない。
「漢字テキスト」の神名・人名は、当然、すべて日本語(倭語)の固有名詞としての語構成・構造をもっているのだが、残念ながら従来の学説によって無視されてきた。『古事記』の固有名詞(神名・人名)は、いわゆる膠着語としての日本語の特長が、此処にも如実に表れている。筆者が「古事記假名」と名付けた「万葉仮名」よりも古い、年代幅の広い「假名」によって表記されている。それによって、和語の語構成・構造が明確に析出され、連体助詞が重複、重層的に表記されていることも判明した。
しかし、日本語(倭語)としての固有名詞の基本となる語構成・構造《名詞(属主=地名・国名)+連体助詞+名詞(霊称・王称・敬称など)》は、音字假名の表す音価の三転に伴って多様な機能辞(連体助詞)を認めて初めて発見できた。日本語学・日本文学、漢字研究をはじめ言語諸学の連携研究が必要、不可欠な分野でもあった。
特に訓字假名表記されているものには、例えば、大野晋などは、「大物主」の連体助詞〈も・の〉の重合を表している訓字假名表記である「物」を、デーモニッシュな力、エネルギーと解していた。
このような、「横行」していた知識人による訓漢字の意味に基づく解釈は、固有名詞の基本構成・構造《名詞(属主=地名・国名)+連体助詞+名詞(霊称・王称・敬称など)》の確認、追認により解消されるであろう。
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